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ミステリの祭典

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三つの目

作家 モーリス・ルブラン
出版日1987年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 Tetchy
(2013/12/26 23:16登録)
ルブランと云えばやはり怪盗紳士ルパンシリーズが最も有名だが、本書はノンシリーズ。しかもSF長編だ。

ある時突然発明家の研究室の壁に現れた3つの目のような三角円。まる生身の目のように脈動するそれは歴史上の有名な出来事を映画のように映しだす。
この3つの目を巡って金儲けを企む輩が現れ、博士は殺害され、彼の代子の女性もさらわれてしまう。この不思議な現象は博士の長年の太陽熱に関する研究の副産物でありながらも金を生む卵となりえたのだが、同時に悪党どもの群がる餌にもなってしまったことを考えると災いの種でしかないように思える。

この3つの目の正体はトンデモ系の真相だが、21世紀の今ではある技術に該当する。こんな理論を1920年に想像していたルブランに驚愕せざるを得ない。そして本書が訳出された1987年当時でも本書の突飛な発想に読者や書評家は理解する頭を持っていなかったのではないだろうか?そんなことを考えると本書は実に早すぎた書なのだと云える。

この3つの目を核にしてその秘密を乗っ取ろうとする悪党どもと発明した博士の代子である娘と主人公である東洋学者がせめぎ合う冒険活劇となっている。やはりルブランはルパンの手法をSFでも用いているのだ。
しかしだからいわゆる一般的なSFとはどこか味わいが違う。ルブラン作品には欠かせない主人公とヒロインの恋物語も盛り込まれており、それがバランスよく溶け合っていればいいのだが、どうもごった煮のような印象しか残らなかった。

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