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ミステリの祭典

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カシスの舞い

作家 帚木蓬生
出版日1983年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2013/12/10 10:45登録)
サスペンスに満ちた描写が素晴らしい。
なかでも情景描写は過去形の短文が連なっていて、ハードボイルド的だった。この「~だった。~した。・・・」の単調さは個人的には好みです。
そもそも英語や仏語などの海外小説の場合、文型(単語の並び)が日本語のそれとは違うから、日本語で前記のように翻訳されている文章でも、原語では単調に感じないのかもしれません。そのへんのことはわかりませんが、とにかく外国から持ち込まれて日本語独特の文体になったのではという気がします。

本作は、フランスが舞台の日本人医師を主人公とした、作者お得意の医療サスペンスです。
首なし死体の発見、その後連続して起きる不可解な事件など、エンタテイメント要素はたっぷりあります。一歩まちがえれば猟奇ものにもなりそうですが、解説の言葉をかりれば、そんな場面が清涼感のある筆致で描かれ、それが静かなサスペンスをもりあげています。

こんな医療サスペンスをノヴェル&ミステリーとして堪能しましたが、ただ、やはりエンタテイメントとなると、もうちょっとスリルがあってほしいし、もっともっと起伏に富んだプロットであってほしいなという気もします。

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