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ミステリの祭典

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若狭湾の惨劇

作家 水上勉
出版日1962年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2013/10/31 22:34登録)
表題作は130ページほどの中編で、その他に5編の短編を収録した作品集です。
その表題作は、松本清張と同じく象徴的なタイトルの多い水上勉にしては珍しいタイトルですが、内容はやはりこの作者らしく、生まれ故郷の福井県を舞台に地方色豊かな雰囲気を持った社会派です。それでも、ごく単純とは言えアリバイトリックや死体処理方法の工夫があります。一般人と警察が協力して真相に迫っていく構造は、長編でもよく使っているところ。
短編のうち『人形』が公務員汚職を扱ったまさに社会派な作品である一方、『東京の穽』はそう思わせておいて、肩すかしをくわせています。他の3編は作者自身の一人称形式で、ドキュメンタリー・タッチになっていますが、その中では特に『消える』のブラック・ユーモアが楽しめました。また、あえてタイトルは伏せますが、近年の某本格派長編で使われていた死体処理トリックの原型と言える作品もあります。

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