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ミステリの祭典

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プリズン・ストーリーズ

作家 ジェフリー・アーチャー
出版日2008年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2013/09/29 20:15登録)
タイトルどおり、“監獄に入っていた”男たちの実話をベースにした作品集。
原題は“Cat O'Nine Tales”(九尾の猫)。作者のJ.アーチャーも収監された経験を持つことは有名。
(まさに、転んでもタダで起きない、作家魂あふれる作品)

①「自分の郵便局から盗んだ男」=商才あふれる夫婦が主人公。フィッシュ&チップスの店で成功を収めた夫婦が、ステップアップとして選んだのが郵便局の買収。それも見事に成功していたのだが・・・
②「マエストロ」=大繁盛しているイタリアレストランなのだが、オーナーの男が手にしている収入が望外に少ないものだった。何か秘密が隠されているのか?
③「この水は飲めません」=ロシアにやってきたおしどり夫婦。しかし、それは仮の姿で、夫は妻を亡きものにするため、「水」に仕掛けを施す。男の作戦は成功したかと思われた矢先に・・・。何とも言えない皮肉というか、作者らしいきついオチが待ち受ける。
④「もう十月」=十月がくると自ら進んで小さな犯罪を犯し、収監されることを望む男。この手の話は日本でもよく耳にするけど、やっぱり世界でも共通なんだね。
⑤「ザ・レッド・キング」=“レッドキング”っていうと、どうしてもウルトラ怪獣を思い出してしまうが(古いか?)、当然全く関係なし。逸品のチェスの駒(キング)をめぐる詐欺がテーマなのだが、ちょっと分かりにくい。
⑥「ソロモンの知恵」=なかなか結婚しなかった親友が連れてきた女性は、絶世の美女だがバツ2の女性。親友が突然大金を相続した直後、女性から離婚を言い渡されてしまう。離婚裁判の場でも女性の思惑通りに進むかと思われたが・・・最後に切り返しが!
⑦「この意味、分かるだろ」=何回捕まっても密輸に手を染めてしまう馬鹿な男。こんな男にもったいない商才のある妻。妻は夫の保釈金を支払いながらも、着実に会社を大きくしていくが・・・。男ってアホだね。
⑧「慈善は家庭に始まる」=会計事務所に務める真面目だけが取り柄の男。繰り返しの人生のなかで出会ったひとりの女性と恋に落ちる。そして、これまでの会計士としての経験から、ある儲け話=犯罪を思いつくのだが・・・
⑨「アリバイ」=ミステリーっぽいタイトルだけど、オチは正直よく呑み込めず。
⑩「あるギリシャ悲劇」=ギリシャの海上に浮かぶ小島が本作の舞台。島民の父という存在の老人が大活躍(!?)
⑪「警察長官」=インド・ムンバイが舞台。あまり記憶に残らず。小品かな。
⑫「あばたもえくぼ」=イタリアはローマが舞台。サッカー界の元英雄が一生のパートナーに選んだのは、何と体重100kgは超えるという何とも不釣合いな女性。そして、その女性が早逝し次に選んだのも・・・。要は“デブ専”ってこと?

以上12編。
ストーリーテラーとして定評のある作者。どの短編集もツイストの効いた「うまい」作品が並んでいるだけに、今回も安定感十分な短編を期待していたのだが・・・
今まで読んだ作品よりは一枚落ちるなというのが正直な感想かな。
クライムノベルとしても、ちょっと小品という感じだし、ミステリーとしての観点からすると高評価はちょっと難しい。
(私的ベストは③。⑥や⑦もまずまず。)

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