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ミステリの祭典

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名探偵乱歩氏

作家 黒木曜之助
出版日1987年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 kanamori
(2013/11/01 20:32登録)
休筆宣言をして日本各地を放浪していた江戸川乱歩は、ひょんなことから前の年の昭和6年に千駄ヶ谷で発生した”高利貸し殺し”事件に首を突っ込むことになる。元新聞記者の青年を助手に調査を進めるが、この市井の事件が国際的な陰謀を孕む意外な様相を見せ始め、関係者が次々と殺されていく--------。

黒木曜之助は乱歩賞の候補になったこともある推理作家ですが、「津山三十人殺し」など別名義のノンフィクション・ライターとして有名です。本書も昭和6年に実際に起きた事件を端緒に、乱歩のエッセイ風半自叙伝「探偵小説四十年」に書かれたエピソードを巧く挿入しながら語られるので、実録小説を思わせるところがありました。
ところが読み進めるにつれて、共産党の暗躍やロシア・ロマノフ朝の金塊が絡む陰謀など、とんでもない方向に話が進展していきます。登場人物間のつながりや犯人の工作が、偶然に頼ったご都合主義的な側面がかなり目立ち、謎解きミステリとしての出来でいえば不満点が多い作品です。ただ、乱歩の友人で探偵作家&弁護士の浜尾四郎や海野十三、阿部定など、登場する実在人物も多彩で物語自体はそれほど退屈ではなかった。プロローグの黄金仮面をかぶった二人の女性によるレスビアンショーなど、煽情的シーンが多いのは乱歩作品へのオマージュだろうか。

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