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ミステリの祭典

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螺旋階段の闇
トム・ポラード警視

作家 エリザベス・ルマーチャンド
出版日1981年02月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2016/09/02 08:24登録)
(ネタバレなしです) 英国のエリザベス・ルマーチャンド(1906-2000)が教職を引退してから趣味と実益を兼ねてポラード警視を探偵役にしたミステリーを書き始めたのが1967年、既に還暦を過ぎての作家デビューという異例の遅咲き作家ですが1980年代後半まで元気に書き続けたそうです。1976年発表のポラ-ド警視シリーズ第8作の本書は型破りな真相が読者によっては拒否反応が出るかもしれませんが、それ以外の部分は本格派推理小説ならではの捜査と推理がしっかりと描かれていますし人物描写も丁寧です(現場見取り図が添付されているのが嬉しい読者サービス)。ユーモアをまじえたエンディングの後味もよいです。

No.1 5点 mini
(2013/10/22 09:51登録)
デビューが極端に遅かった女流作家と言うと、アメリカ勢ではクリスティも敬愛したエリザベス・デイリイが有名だが、英国勢でこれに対抗する女流作家が偶然名前も同じエリザベス・ルマーチャンドである
名前だけでなく両者共60歳を超えてからの遅咲きデビュー作家であるが、デビュー作が1940年のデイリイと1967年のルマーチャンドを単純に比較は出来ないだろう
ルマーチャンドは90年代近くまで作が有り、これはもう現代本格と変わらない執筆年代である

森事典や海外クラシック中心の某ブログでも、伝統的な謎解きミステリー的と断定しているが、う~ん必ずしも同意できないなぁ
作者が高齢だからそういうイメージで語られがちだが。例えばクリスティの晩年の作などもただ懐古趣味に徹しているわけではなく、社会風俗への時代の変遷を感じさせる描写は有る
「螺旋階段の闇」も1976年の作だけに、これを単純に黄金時代風と見るのは正しくないように感じた
探偵役が警察官ということもあってか、どちらかと言えば警察小説か現代本格風の趣がある

ところで上記で言及した某ブログでは、一般的に登場人物一覧表というのは日本の出版社が読者への便宜として記載しているかのような記述があったが、これも厳密には正しくないと思う
元々の原著に一覧表が付されているものも少なくなく、有名なのはナイオ・マーシュの登場人物一覧表で、実際に登場する人物は端役の警官まで表記するが、伝聞でしか出てこない人物はそれが物語中でどんなに重要人物であっても記載されないという劇の配役表の様ないかにも演劇人マーシュらしい一覧表である
ルマーチャンドの一覧表はそこまで極端では無いが、森事典や文庫解説にもあるように、見取り図掲載なども合わせてみるとたしかにマーシュ風とは言える
ただそれをもってルマーチャンドを黄金時代本格を髣髴とさせるという解釈は必ずしも正しくないように思えた

さて問題は、黄金時代風なのが本格として価値が有り、現代本格風なのは雑味成分が多くて駄目だとか、私はそういう風には思わない
現代本格は現代本格としての良さが有ると思う
そこでルマーチャンドだが、その点どうも中途半端感有るんだよなぁ
この作の真相に私はそれ程唖然とはしなかった、別にこの真相でそれはそれでいいのだけれど、黄金時代的にも現代本格的にも特に魅力が有る感じはしなかった

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