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ミステリの祭典

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キング・オブ・クール

作家 ドン・ウィンズロウ
出版日2013年08月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2013/09/16 19:09登録)
『野蛮なやつら』が還ってきた!前作で華々しい最期を遂げた彼らの続編はその事件の前日譚。流石に前作に見られたあの鬼気迫る短文と固有名詞の乱れうちのような文体は鳴りを潜めているが、それでも彼ら3人を語るオフビートテイストな、ちょっと特異な文章と短い章で刻んでいくストーリー運びは健在。ちなみに第1章が一行で始まるのもまた同じだ。

その第1章が前作では「ざけんな!」であったのに対し、今回が「あたしとしてよ」だったのには思わずニヤリとしてしまった。日本語では解らないが、これは前作が“Fuck you!”であり、今回が“Fuck me.”と対語になっているのだ。もうこの1章から一気に彼らの世界に引き戻されてしまった。

さてウィンズロウ読者には嬉しいサーヴィスが。なんとボビーZとフランキー・マシーンが客演するのだ。

しかし最近のウィンズロウは麻薬をテーマにした作品が多い。しかもそれらは常に血みどろの惨劇になる。また麻薬は関係ないかと思われた作品でも麻薬が絡むことで昏い翳を落とす。『犬の力』を構想中に得た麻薬業界の知識と麻薬捜査の現状の虚しさが作者に怒りを与え、もはやライフワークの感がある。
ファンの1人としてはあまり麻薬に固執せずに物語のアクセントとしてこれからも面白い物語を紡いでほしいと願うのだが。

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