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ミステリの祭典

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日蝕の檻

作家 小林久三
出版日1977年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2014/01/28 00:20登録)
映画の助監督や脚本家の経験もある小林久三が、第二次世界大戦後の日本映画界の影の部分を描いた大作です。
作中では、日本映画がどん底状態だという見方が常識であるように書かれていますが、1977年発表ということは、たとえばその前年に『犬神家の一族』が公開され、むしろ上向きになってきた時期のように思えます。また作者の言うごく一部の「良心的な映画」には寅さんも入りそうにないのですが、まあそこはテーマを明確にするための誇張なのでしょう。事件の黒幕の正体は最初からわかり切っていますが、社会派的な部分は充実しています。
ただ構成的に見ると、ベテラン刑事、若手のプロデューサー、脚本家の妻の3人の視点を切り替えていく手法とか、フラッシュバックで捜査過程を説明する手法など、さほど効果がないように思えます。シリアスな作風だけに、もっとストレートに書いてもらった方がいいような気がしました。

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