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ミステリの祭典

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逆転世界

作家 クリストファー・プリースト
出版日1983年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2013/07/15 21:02登録)
<地球市>と呼ばれる都市は軌道上に乗る動く7層からなる都市でその行先の測量をし、軌道を敷設し、断崖があれば橋を架ける。それがギルド員の仕事だった。1年に約36.5マイル動く都市に住む人々の年齢もまた時間ではなく、距離で表現される。人は650マイル、即ち約18歳になると成人とみなされ、それら複数のギルドの中から自分が就くべき職業を選択する。そして成人になるまで都市の人々は外の世界へでることはないのだ。
クリストファー・プリーストが1974年に発表したSF小説である本書はそんな奇想が横溢する世界が舞台だ。

動かざるを得ない都市があるこの星の世界は数学的理論に支配され、とにかく読んでいる間は次第に見えてくる世界の摂理にうなされてばかり。奇想、奇想の連続だ。

しかしそんな動く都市と歪む世界の摂理は第4部で驚くべき転換を見せる。その衝撃は某有名映画が存在しなければかなりの衝撃を私にもたらしただろう。

しかしそんな先行作の二番煎じと断ぜずにこの作品の抱えるテーマをじっくりと考えてほしい。歪みゆく世界から逃れるために動く都市。彼らの行動原理には原因と結果が備わっており、この世を理解するに十分な論理が存在している。そんな安定した世界観を覆す奇想。まさにコペルニクス的発想転換。当時のガリレオの地動説が発表された衝撃と黙殺しようとした学会の気持ちが実によく解る。

色んな要素を含んだこの作品を一概にSF作品とジャンル分けするべきではない。宗教的な盲信の恐ろしさと奇想の数々、そしてそれを覆す論理的展開。現在でも本書が手に入る状況を保っている出版社の志に感謝!

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