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ミステリの祭典

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クラッシュ

作家 馳星周
出版日2003年08月
平均点3.00点
書評数1人

No.1 3点 Tetchy
(2013/02/19 23:00登録)
各編どれも相変わらず救いがない。ほとんどの作品が物語をほっぽり出して唐突に終わる。歯切れの悪い読後感が残され、自分の中でどう収拾つけたらよいのか解らないと云ったところ。

語られるのは渋谷のギャルの自己本位な生活、一昔前のチーマーを想起させる新宿に跋扈するギャングスターたちの抗争の一幕、ヤクの売人が家出少女を捕まえて借金返済の金蔓にしようと働かす悪知恵、分不相応のお水の世界に足を踏み入れたばかりに人間関係に疲弊する女子大生、家庭不和の環境に育ち、学校にも行かず麻薬と暴力、強姦に明け暮れるやさぐれた少年の日々、その日暮らしの日雇い労働者が陥った最悪の一日、売れないホストとマレーシア女性との交流、ジャニーズ顔と美しい指で女に貢がせながら金を車につぎ込む走り屋、と今まさにどこかに実在しているであろう人々の話だ。

そんな人々の話を馳氏は勢いと衝動に任せて筆を奔らせているように感じる。したがって物語の中には起承転結がないものがある。いやほとんどの作品が起承転結がないといってよかろう。本書に収められている物語は過去から未来まで続いていく彼らの生活のワンシーンを切り取って我々読者に見せているだけといった趣が感じられる。
しかしこれほど読後感が悪い短編集も珍しい。この前に編まれた短編集『古惑仔』にも増して救いがない、いやむしろ物語の結末をつけること自体放棄した感が強まったように感じられる。

本当に何も残らない短編集だ。

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