脅迫者によろしく 西連寺剛シリーズ |
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作家 | 都筑道夫 |
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出版日 | 1979年07月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2015/06/26 22:54登録) 私立探偵・西連寺剛シリーズの第2短編集。”おれ”こと西連寺は、ボクサー上がりの硬骨漢ながら弱者に対する優しさもある。自宅マンションを探偵事務所にして、主に人探しを専門に請け負う。 本格パズラーから捕物帳、SFファンタジー、ホラー、時代伝奇、クライム・コメディまで、作者が色々なジャンルで創出してきたシリーズ・キャラクターのなかでは、この主人公は常識人で個性は抑え目に感じられる。やや通俗に流れるところがあるものの、内容はわりとシリアスで、正統派のハードボイルドを志向しています。 収録作はハードボイルドの定番である失踪人捜しが中心ですが、小学生が貯金箱を持って依頼に来たり、スナックで隣り合った女が謎めいたメッセージを残して失踪するなど、事件の発端がそれぞれ工夫があり、自然とストーリーに入り込めるようになっているのが良。謎解きの伏線という点では不十分なものが多いものの、結末の意外性はそれなりに担保されています。 6編のなかでは、古い詩集の挿絵画家の行方を追う「表紙のとれた詩集」が、長編にしてもいいぐらいの中身の濃い作品。ラストに現れるある人物の裏の顔には戦慄を覚える。また、「子豚の銀行」と「髭を忘れたサンタクロース」は、子供の健気さと真相の残酷さの対比で、哀切感をより際立たせることに成功していると思う。 |