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ミステリの祭典

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2013本格ミステリ・ベスト10

作家 雑誌、年間ベスト、定期刊行物
出版日2012年12月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 Tetchy
(2013/05/13 21:44登録)
あれ?誰も採点していない。
本格ミステリファンの多いこのサイトの投稿者が一人も感想を書いていないとは意外だ。

正直本家の『このミス』よりも内容充実度で愉しませてくれるこのムック。
注目のランキングは法月綸太郎の『キングを探せ』が1位となった。寡作ながらもクオリティの高い本格ミステリを紡ぐ法月氏はもはや出せば1位の感が強くなった。今年は早くも新作『ノックス・マシン』が上梓され、ミステリマガジンの四半期ベスト選出でも一席に選ばれている。もしかしたら今年のランキングも制し、二連覇を果たすかもしれない。
続く2位はこれまた寡作家の大山誠一郎の『密室収集家』。この作家の作品は光文社文庫主催の公募式ミステリアンソロジー、本格推理シリーズで読んだ記憶があるが、あまり琴線に触れるものではなかったので正直あまり注目はしていないがロジックに特化した作風が本格ミステリファンには好評らしい。先日本格ミステリ大賞を受賞したばかりでどうやら有名有実の作品のようだ。
3位は新本格の象徴的存在綾辻行人の『奇面館の殺人』がランクイン。
4位はもはや常連、いや優勝候補の三津田信三の『幽女の如き怨むもの』が占めた。もはやその実力は折り紙つき。短編集でさえランクインするというのは実はすごいことで今の本格ミステリファンが新作を待望する作家の1人としての地位は確立されたと云っていいだろう。
5位は鮎川賞受賞作の『体育館の殺人』が選ばれた。これは正直意外。ロジックを褒め称える声は聞こえていたものの、やはり若書きゆえの脇の甘さがあるとのことだったので5位と云う上位に食い込むとは思えなかった。やはり本格ミステリランキングは推理「小説」よりも「推理」小説が重んじられていることか。
6位以下は有栖川氏、天祢氏、島田氏、芦辺氏、初野氏と続いた。
11位以下は山田正紀氏、山口雅也氏、井上夢人氏らベテランに加え、中堅の北山猛邦氏の作品、そして新人の高野氏、長沢氏、市井氏、深木氏の作品が並ぶ。その中で異色なのは時代小説からの参入である幡大介氏の『猫間地獄のわらべ歌』だ。『このミス』でもランクインした同著だが、この作者の作品が今後のミステリシーンにどうか関わっていくが見どころか。

さてその他のコンテンツについてだが正直通例通りの内容で目新しい所がなかったのが残念だ。特に近年は本格短編ミステリオールタイムベストの選出、0年代の海外本格ミステリオールタイムベストの選出とミステリ読者が歓喜に身悶えする好企画が続いていただけに目玉企画がなかったことが残念である。

本書の存続こそがこれからの本格ミステリの隆盛を支える草の根的活動となるので、探偵小説研究会諸氏の志の高さに敬意を証して、年末の刊行を愉しみにしたい。

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