ラヴクラフト全集 (4) 宇宙からの色 眠りの壁の彼方 故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実 冷気 彼方より ピックマンのモデル 狂気の山脈にて |
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作家 | H・P・ラヴクラフト |
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出版日 | 1985年11月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2020/09/03 21:00登録) SF色の強い作品を集めた感がある巻。 やはり「宇宙からの色」が出色の出来。「識別も不可能な宇宙的色彩」「異界的でこの世のものならぬあの虹」と形容される「色」が、野中の一軒家を破滅に導いた怪異について、人間が感知しうる唯一の現象だ、という発想が素晴らしい。怪異も「怪物」というかたちを取ってしまえば、何か馬鹿馬鹿しいものなんだけども、「色」という捉えどころない現象でしか知覚できない、というのが「語らずに、感じさせる」ラヴクラフトの面目躍如。 「狂気の山脈にて」だと、地球の超古代史を創作して、その遺跡に遭遇した南極探検隊の恐怖を描くのだけども...「旧支配者」(というか、混同を避けるなら『古のもの』の方がいいか?)は例の円錐型でいろいろ触手が出ているあれ。想像すると何かかわいい。ぬいぐるみにしても、そう違和感ないような(実際にあるようだ。おそるべし日本人!)...しかも あわれな<旧支配者>たちよ。最後まで科学者だったのだ...もしわたしたちが彼らの立場に置かれたら、わたしたちとてしたようなことしか、彼らもしなかったのに。なんと知的で我慢強い存在なのだろう。 と主人公も「彼らは人間だったのだ」と共感してしまうような存在なんだよね。これじゃ、絶対に怖くはならない。悪役はポオの「ゴードン・ピム」から鳴き声「テケリ・リ」を借りたショゴス、ということになるんだけど、逆に知性をほぼ欠いていて大した存在ではない。SF冒険小説、と見た方がいいんだろうけど、ラヴクラフトだから冒険の爽快さはなくて、中途半端に「恐怖」があるから、扱いに困る。 あとは「ピックマンのモデル」。グールたちのおぞましい行動様式と、それを嬉々として絵に画くピックマンの異常性が面白味で、例のオチは読めるし衝撃的なわけでもない。過大評価だと思うけどねえ....分かりやすい作品ではあるか。後の4作は短くて習作みたいなもので、取るに足らない。 というわけで評者満足、はこの巻は「宇宙からの色」のみ。ちなみに「色」というのは人間の外部にある「物理現象」じゃなくて「心理的現象」、いいかえると人間の感覚受容器官の上で起きる現象、で今は落ち着いているから、純粋に心理的な現象の「ホラー小説」との相性は抜群、ということにもなるように思う。さすがはラヴクラフト。 |
No.1 | 4点 | ムラ | |
(2012/11/28 18:22登録) 解説にもあるが、本作は狂気の山脈にての中でラヴクラフト作品にちょくちょく顔を見せる<旧支配者>についての歴史が濃厚に書かれている。 だからというわけじゃないけど、<旧支配者>達の神殿の情景[この描写がちと長かったが]やシュゴスに恐怖する主人公たちが鮮明に書かれていて面白かった。 本作は科学的な一面を強くだした短編集とあるように宇宙からの色や眠りの壁の彼方はSF的なホラーになっている(というよりもこれはラヴクラフト全般に言えることなのかな) 冷気とピックマンのモデルは典型的なホラーという感じ(解説ではポオの影響そのまんま出てるとも) どうでもいいが、最後の解説にあるピックマンのモデルの絵がファンタジーに出てきそうな感じでちと可愛かった |