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ミステリの祭典

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ベイジン

作家 真山仁
出版日2008年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2021/05/03 18:30登録)
地球温暖化、原油価格高騰、バイオ燃料への転換がもたらす弊害など、いま世界が抱える問題の大部分は、エネルギーに関するものだといってもおかしくない状況。そして原子力発電に関しても、安全性や放射性廃棄物の問題など、依然大きな不安を残したままである。この作品は、世界最大規模の原発に関わる日本人技術者を主人公とした大型エンターテインメント。舞台は五輪開幕を目前に抱えた中国。日本技術者のみならず、中国側の責任者、そして北京五輪の記録映画の監督に指名された中国人女性の三人の視点で話は展開していく。「絶対的な安全」という目的と「国家の威信」という中国政府のメンツがぶつかったり、大連市の汚職摘発問題が背後にあったり、日本と中国の関係がさまざまな事件に発展していったりと重層的な物語が読み応えを深めつつ、幾多の困難に見舞われながらも最後まで「希望」を捨てない主人公らの姿が身に迫ってくる。さらに五輪開幕日までの悪戦苦闘ぶりが、壮大なタイムリミットサスペンスのように緊張と興奮をもたらす。

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