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ミステリの祭典

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ラヴクラフト全集 (3)
ダゴン 家のなかの絵 無名都市 潜み棲む恐怖 アウトサイダー 戸口にあらわれたもの 闇をさまようもの 時間からの影

作家 H・P・ラヴクラフト
出版日1984年03月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2020/05/24 08:03登録)
HPLも3巻からは「全集」モードで仕切り直し。訳者も大瀧啓裕で固定になる。なので本書は「ダゴン」「無名都市」の神話作品としてのマイルストーン的重要作が登場。まあただし、神話要素の初登場、ということで注目される話なので、短編幻想譚として悪くはないけど、らしさ全開の名作、とはいかない。「家の中の絵」「潜み棲む恐怖」はニューイングランド因習的恐怖譚で、構成に強く関心を持つラヴクラフトらしさは出ているが、ややあざとい。
としてみると「アウトサイダー」はほぼポオの模作だけど、なかなか出来がいい。「赤き死の仮面」を「仮面」側から描いたような話だけど、実際これにラブクラフトが自分を投影していることもあって、ホラー小説読者論みたいなものを読みこむと面白いと思う。
「戸口にあらわれたもの」は「チャールズ・ウォード」を親友の視点固定で描いた別バージョンみたいな話。「チャールズ・ウォード」よりエンタメしていて、晦渋ではない。結構、いいと思うんだ。
「闇をさまようもの」はHPL最後の作品になる。HPLを慕うロバート・ブロックとのキャラ交換のお遊びがあって、主人公がロバート・ブレイク。ガジェットとして「輝くトラペゾヘドロン」が登場。邪宗教会の廃墟に魅惑される主人公の話だけど、嵐の夜に近隣のカトリック教徒たちが「教会に住む魔物」を封じ込めるために....あたりの描写が雰囲気が出ている。雰囲気のイイ作品だが、話のアクションに欠ける弱点があって今一つ。たった30ページと思われないほどに濃密なんだけどね。
で中編規模の「時間からの影」。雑誌発表が「アウスタンディング・ストーリーズ」だから、神話にSFを接木したような作品で、SFの驚異とホラーの恐怖とどっちつかずになって、どうにも扱いに困る。SFとホラーの合体でHPLがうまく書けたのは「宇宙からの色」くらいしかないと思うけどね。「大いなる種族」は人類とは相いれないだけで、決して邪悪でも悍ましくもないと思うんだ。姿が奇怪だから...で恐れるのは差別ってもんでしょう(苦笑)。
全集ペースになるから、いい作品、重要な作品も含まれるけど、イマイチ作も増えてくる...HPLでもそんなもん。

No.1 4点 ムラ
(2012/10/25 03:19登録)
一巻の闇に囁くでも思ったが、ラヴクラフトは主人公が狂った友達あるいは知り合いの経過を眺める話のが心理描写の比率が多くて面白い。というわけで三巻で一番よかったのは戸口にあらわれるものである。アウトサイダーは驚異的な読みづらさ以外はセオリー的なホラーだったかな。家の中の絵も比較的ホラーのほうに比率が傾いていた気がする。普段、自分は解説などは読まないで次の本を読み始めちゃうのだが、この翻訳者の解説は作品に理解の補強に役立つので見ていて損はないと感じた

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