ラヴクラフト全集 (1) インスマウスの影 壁のなかの鼠 死体安置所にて 闇に囁くもの |
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作家 | H・P・ラヴクラフト |
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出版日 | 1974年12月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 8点 | クリスティ再読 | |
(2020/04/04 12:24登録) どうしようか迷ったけど、コロナ騒ぎで本の調達に困りそうなこともあるから、ラヴクラフトもやろうか。もともと2巻の傑作選だったのが、神話人気で7巻の全集+別巻上下まで膨らんだこともあって、最初の2巻に名作が大体入ってる印象がある。1巻目の目玉はいうまでもなく「インスマウスの影」。評者「チャールズ・ウォード(2巻)」「ダニッチの怪(5巻)」と併せて3大名作だと思ってる。 「インスマウス」は前半と後半と構成が歪になっていることで、狙ったのかどうかよくわからないのだけど、この歪さ自体が本当に怖い。評者の妄想だけど、主人公は実はマーシュ家とは何の関係もなくて、インスマウスの体験の中で脳内に侵入者を許してしまい、徐々に人格転移を起こして...なんて補完して読んじゃうと、さらに怖い。まあそこまで妄想をたくましくしなくてもいい。主人公の立場というのは「怪奇小説愛好家」の姿そのままなんだよね。「怖い!ぞっとする!」に魅かれてわざわざ「怖い小説」を手に取って読み、「怖いけどやめられない...」であっという間に読了し、読み終わった後はその「怖い世界」に心情的に同化して、郷愁とか懐かしさを感じてしまう。そんな「怪奇小説愛好家」の姿がそのまま、この主人公の姿に投影されているようにも思うんだ。だから、この小説は一見ちぐはぐに見えて、実はそうじゃない。奇跡のバランスだと思う。 まあ「インスマウス」と比較すると他は霞んで当然。「闇に囁くもの」はラヴクラフトのSFっぽい面が強く出ているタイプ。まあこれはラヴクラフトのねちっこい語り口で恐怖を先送りしつつ期待を高める名人芸を楽しむべきなんだろう。まだひっぱる?とか思いながら読むと怖くなくなるのが難点。「壁のなかの鼠」は単体で見たらまとまりのいい佳作だと思う。「死体安置所にて」はまあ、ブラックユーモアでしょこれ。 でクトゥルフ神話の神名など固有名詞は、そもそも「人間に発音不可能」という設定なので、統一の取りようもないのだが、第1巻の訳者の大西尹明は 原語に表記された文字に基づいて発音されると考えられる許容範囲内で、その最も不自然かつ佶屈たる発音を選んだがためである という方針。だからクトゥルフとかヨグ・ソトホートとかになる。ドイツ語っぽい味があって、好きだ。 |
No.1 | 3点 | ムラ | |
(2012/10/25 02:51登録) 翻訳本の中ではけっこう読みやすい方だとは思った。特に闇に囁くものは手紙の部分と相まって、すらすらと読めた。だからというわけでもないけど、個人的にお気に入りになのは闇に囁くもの。オチの読み方と、ヘンリーの手紙がどんどん恐怖に煽られていく感じがなかなかそそられる。インマウスの影はるるぶっぽかった個人的に。壁の中は鼠は「エターナルダークネス」彷彿とさせて楽しめた。(というかあっちがこれをリスペクトしてるんだから似てて当然だけど)でもなんだかんだで、一番この本の中で読めたのはギャグホラー風味の死体安置所にてかも。 |