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ミステリの祭典

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拮抗
競馬シリーズ(フェリックス・フランシスとの共著)

作家 ディック・フランシス
出版日2010年01月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点
(2019/02/17 21:24登録)
 競馬専門のブックメーカー店舗を祖父から受け継いだネッド・タルボット。彼はインターネットの天才である助手のルカに助けられ、大手ブックメーカーの攻勢に晒されつつもなんとか商売を営んでいた。
 そんなある日彼のもとに、母親と共に事故死した筈の、実の父親ピーターだと名乗る男が現れる。ネッドが一歳の時に別れてから三十六年ぶりの再会だった。だがその直後に彼は、顔にスカーフを巻き、パーカーのフードを被った男に刺殺されてしまう。「金はどこだ?」と凄んだ事から、金銭目当ての犯行と思われた。
 血痕をDNA鑑定した結果、被害者は間違いなくピーター本人と確定するが、同時にネッドは事件担当のルウェリン警部に思わぬ事実を告げられる。ピーターはネッドの母を絞殺した直後に逃亡し、指名手配されたままだというのだ。
 ネッドは競馬場での会話から宿泊先を突き止め、幸運にも父のリュックサックを手に入れる。隠しポケットには謎の品物――競走馬の個体識別手帳が二冊、十粒の超小型電子回路、TVのリモコンに似た黒い装置――それに三万ポンド相当の現金が入っていた。オーストラリアから来たと言っていた父親。これらの品物もかの地と関係があるのだろうか?
 ルウェリンへの反感から独自に事件の謎を追うネッド。だがその彼を狙うのは、フードの男だけではなかったのだ・・・。
 2009年発表の競馬シリーズ第43作。親子共著になってからは前作「審判」に続いての3作目。フランシス単独作品に描写的には劣りますが、巧みなプロットでかなり読ませます。
 主人公はブックメーカー業をそこそこ切り回しているとは言え、助手のルカは野心家で、うかうかすると見切られかねない状態。妻のソフィは精神病院の入院患者で、ここ数年間自宅と施設とを何度も行き来する状態が続いています。
 父を殺害したフードの男の影に脅えていると、間髪入れず自宅に別口の侵入者。相次ぐ競馬場でのインターネット・トラブルに絡み暴行を受けたかと思えば、今度は一転して店を買い取りたいという申し出。
 なんかヘヴィな展開がてんこ盛りでいっぱいいっぱいなんですが、それがこう着地しましたかと。過去の事件の真相はアレですが、それ以外はかなり痛快な終わり方。あそこからこう来るとはおでれえたなあ。
 いつまでもディックの面影を追うのではなく、「祝宴」以降のフェリックス共著作品は、また別種のミステリとして賞味すべきだと思います。そういう意味で本作はお奨め。4作全部を読んではいませんが、たぶんこれが一番なのではないかな。

No.1 8点 mic
(2012/10/18 15:25登録)
徹底的に人生を虐げられた男が不屈の精神で窮地を脱しようと
する姿が好ましい。興奮もそうだったが、遥か離れたオースト
ラリアが英連邦なのでうまく物語に取り入れられている。さすが
この辺は大英帝国。複雑な家庭物語だと思うが、意外な真相には
うーん、こうだったのかと驚かされた。あと、個人のブックメーカーという職業は退職金もボーナスもなくて大変そうだね。

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