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ミステリの祭典

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はぶらし

作家 近藤史恵
出版日2012年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2019/09/06 19:45登録)
近年、一つの家で赤の他人と共同生活をする模様を描く小説やドラマに秀作が生まれている。幾多の困難があっても、最後は心温まる話へと落ち着くのが定番でしょう。しかし、流行のシェアハウスも実際には予想できないトラブルが起こるはず。ましてや、さほど親しくもなかった昔の学友と同居すると、どうなってしまうのか。この作品は、そんな状況をリアルに描き、さらに恐ろしい現実を突き付ける。脚本家の鈴音は、高校で一緒だった水絵と10年ぶりに会うことになった。待ち合わせの店に行くと、水絵は7歳の息子を連れていたばかりか、離婚したうえに職がなく、住むところもない。そんな水絵に「一週間、鈴音の家に泊めてほしい」と頼まれる。一緒に暮らし始めたものの、生活習慣の違いだけではなく、さまざまな出来事が鈴音を苦しめ、事態は悪くなる一方だった。タイトルの「はぶらし」にまつわるエピソードが秀逸。こちらの常識が相手に通じない。しまいには、相手が人の好意や優しさにつけこんでいるように思えたり、逆に自分の心が狭いと感じ、罪悪感を抱いたりする。作者は、ヒロインのそんな細やかな感情の揺れをじっくりと物語るとともに、水絵に隠された過去があることをにおわせる。先を追わずにいられない心理サスペンス。

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