home

ミステリの祭典

login
推理小説作法
土屋隆夫

作家 評論・エッセイ
出版日1992年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2012/09/24 10:58登録)
江戸川乱歩、松本清張の共著の同名書籍もありますが、本書は土屋隆夫が著したものです。著者の経験や他の作家の言葉にもとづく書き方指南書といったところでしょうか。
いろんな作品が登場するので読み手にとってガイド本のごとく参考になりますが、やはり書き方を教えるのがこの本のテーマなんでしょうね。
20年ほど前に読んだときは推理小説に関し無知な頃で、わからないまま読み飛ばしていたため記憶にはほとんど残っていなかったのですが、読み返してみると、純文学とミステリーとの書き方の差異(純文学はプロット不要)について、この本が潜在意識として植えつけてくれたんだなということを確認できました。

ミステリーは解決編があるがため文学性を失ってしまう、だから文学として成立させるのは困難。最後の最後に解決編で説明的な文章を読まされてしらけてしまう、ということなんですね。だから、倒叙モノはわりに文学性を保てるという理屈にもうなずけます。
松本清張は推理小説と文学の両立に挑んだのですね。特に、「点と線」で本格推理小説を書きたかった。(ここからは私の想像ですが)でも社会派モノとしての評判だけが世間に広まってしまい、それに反発して、さらに本格性を高めた「時間の習俗」を書いたのではという気がします。

創作メモの作り方、プロットの練り方の章では、種々の作品の事例を挙げながらポイントを説明してくれるので、説得力があります。そして、第7章では自分の短編全文を読者に読ませながら分析するという凝ったやり方も実践しています。
全体的にみると、他の作家等の意見もとりいれているので、決して独善的に感じることはなく、これからミステリー作家になりたい人にとって、スムーズに入っていけるのではないでしょうか。

ネタばらしも数多くありますが、指南書なのでやむを得ませんし、自著を中心としたネタばらしがほとんどなので許容範囲だとも思います。ただ、「アクロイド」のネタバレはかなりストレートだったようです。

1レコード表示中です 書評