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ミステリの祭典

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マグマ

作家 真山仁
出版日2006年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 E-BANKER
(2012/07/14 22:34登録)
2008年発表のノンシリーズ作品。
登場人物の設定などはいかにも「ハゲタカ」の作者らしいのだが、「地熱発電」という題材が今となってはタイムリーな作品となった。

~外資系投資ファンド会社勤務の野上妙子が休暇明けに出社すると、所属部署がなくなっていた。ただ一人クビを免れた妙子は支店長から「日本地熱開発」の再生を指示される。なぜ私だけが? そのうえ、原発の陰で見捨てられ続けてきた地熱発電所をなぜ今になって・・・? 政治家、研究者、様々な思惑が錯綜するなか妙子は奔走する。世界のエネルギー情勢が急激に変化する今、地熱は救世主となれるのか?~

これはヒロイン小説だな。
とにかく主人公・野上妙子が実にヒロインチックなのだ。
東大卒。子供のころから勉強、スポーツともに優秀。おまけに美人でリーダーシップも十分という才媛。外資系金融機関に入り、またたく間に出世。そんな彼女が畑違いの「地熱発電」会社で、様々な人間の欲望や想いに揉まれながらも成功を勝ち取っていく・・・
こんな非の打ちどころのない女性が、内心は不安でしようがないのに、肩肘張って健気に啖呵を切るのだ、男としては「キュン」とせずにはいられない・・・

そしてもう一つのテーマは当然「地熱発電」。
本作は東日本大震災前に発表された作品であり、今現在の脱原発の動きとは全く関係ない。それだけ作者の先見性が窺える。
もちろん本作はフィクションなのだが、電力業界周辺や裏側に渦巻く利権に関しては十分にうなずけるところがある。
そして、大震災後の今、「地熱発電」は再び注目を浴びようとしている。
(確か、出光興産が福島県で大規模な地熱発電所を計画しているっていうニュースを見たなぁ)
脱原発が本当に可能なのか、つい最近民主党を離れた某剛腕政治家に聞いてみたいものだが、個人的には少しでもクリーンで安全性の高い発電方法へシフトさせるのは、我々の世代の使命ではないかとも思う。

なんだかミステリーの書評ではなくなったが、エンタメ小説として十分楽しめる作品ではあるでしょう。

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