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ミステリの祭典

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緋牡丹狂女 人形佐七捕物帳

作家 横溝正史
出版日1984年11月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 おっさん
(2012/06/16 10:19登録)
春陽文庫の<人形佐七捕物帳全集>の、最終第14巻です。収録作は――

1.松竹梅三人娘 2.鬼の面 3.花見の仮面 4.身代わり千之丞 5.戯作地獄 6.緋牡丹狂女 7.影法師 8.からくり駕籠 9.ろくろ首の女 10.猫と女行者

正直なところ、新味の無いイマイチな話、謎解きされても釈然としないお話のオンパレードです。
表題作の6は無意味に長い。
7は、佐七がまだ独り身のときのエピソードですが、それをなぜここに持ってきたのか意味不明。夏のお話だからともかく入れちゃえ(各巻は、季節の順の作品配列)、ということで、本書が出た昭和五十年当時、横溝ブームの渦中で新作(!)を執筆中だった正史には、もう改稿の余裕もなかったのでしょうね。
しいて、集中のお薦めを挙げるとすれば、タイトルが前振りになっていること、江戸時代ならではのトリックに犯人像を印象づける書き方のうまさということで、9ですかね。品の無い、イヤな話ではありますが、ミステリ・ファン向き。

佐七シリーズ全180話のうち、この<全集>で150話がまとめられたことになります。完走記念に振り返っておくと――
最高傑作は、問答無用の面白さと、まとまりの良さで中編「くらやみ婿」(7巻)。
トリッキーな趣向でミステリ・ファンにアピールする秀作が、連続殺人もの「風流六歌仙」(6巻)に怪盗ものの「日本左衛門」(13巻)。
草双紙趣味の怪談仕立てから、人情噺として余韻を残す「雪女郎」(2巻)と、佐七ファミリー(恋女房のお粂、子分のふたり・きんちゃくの辰にうらなりの豆六)の大活躍が楽しい「離魂病」(6巻)。
浮気性の佐七とやきもち焼きのお粂の夫婦喧嘩という、シリーズの一面w を代表させて(しかし油断していると、最後にアッと言わされること必至の)「五つめの鐘馗」(2巻)。

このへんは、もし機会がありましたら、騙されたと思って目を通していただければ・・・と願ってやみません。
岡本綺堂の<半七捕物帳>が写実派なら、こちらはまあ印象派で、時代物の愛好家でなくても大丈夫、敷居は低いですw

シリーズの、気になる残りの30話は、出版芸術社の<横溝正史時代小説コレクション 捕物篇>の『幽霊山伏』と『江戸名所図絵』にまとめられています。
なぜこれが春陽文庫未収録なのか、と不思議に思うくらい面白い作も目につきますから(もちろん出来不出来の差は激しいですがw)、こちらもおってご紹介しましょう。

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