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ミステリの祭典

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トーテム[完全版]

作家 デイヴィッド・マレル
出版日2006年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2012/06/11 23:20登録)
本作は一度1979年に出版されたが改稿と短縮を余儀なくされたものであり、それを1994年にリライトされた完全版である。
一作目がヴァイオレンス・アクション小説ならば二作目の本書はパニック・ホラー小説と趣をがらりと変えている。

かつて鉱山町として栄えた人口二万人ほどの町、そこにはかつてヒッピーたちと村人との間に死者が出るという忌まわしい過去があった。そして町の人々から信頼を得ている警察署長、そんな町に起こった雄牛が血の一滴も残すことないまま切り裂かれる怪事が起こる。やがて同種の被害が住民たちの間にも起こっていく。
とまあ、典型的なハリウッド映画的パニック物語である。デビュー作『一人だけの軍隊』も実際に『ランボー』として映画化されたが、マレルという作家は実に映画向きの題材を扱う。

さて元々1979年発表の作品だが、その頃の小説の特徴なのか物語の合間合間に挿入されるエピソードが実に色濃い。それは端役にしか過ぎない登場人物がポッターフィールドという田舎町に住むようになった経緯の話だったり、その町の歴史だったり、町にある文化財にまつわる逸話、狂犬病に関する知識だったりと様々だ。しかもその内容が箸休め程度ではなく、突然に延々と10ページも割かれたり、はたまた1章を費やしたりとやたらに長い。しかしそれでも内容は濃いため、実に読ませる。まるでサーガを読んでいるような気分になる。

物語の要は次々と人間が獣化し、襲いかかり、なまじっか助かると自身が感染してしまうという新種の狂犬病なのだが、物語はこれについては原因が解明されずに唐突に終わる
結末が曖昧だっただけに消化不良は否めない。完全版というには不完全燃焼の読書だった。

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