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ミステリの祭典

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夜光虫

作家 馳星周
出版日1998年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 Tetchy
(2012/05/30 23:50登録)
今までは東京の裏社会に暗躍する外国人の世界を舞台にしていたが、今回は逆に異国の街の暗黒世界に身を置く男を描き、生き抜くために喘ぐ姿を活写する。それまでに発表されていた作品と180°設定と舞台を変えたのが本書である。
そして扱う世界はなんと台湾野球界。しかしそこは馳氏、ただのスポーツ小説を書くはずがない。彼がテーマに選んだのは台湾野球にはびこる八百長。野球賭博を牛耳る黒道というマフィアが野球選手のみならず球団関係者をも買収して八百長―放水というらしい―を取り仕切っているのが台湾プロ野球界の現状らしい。

しかしそんな物語も結局皆殺しの結末になってしまうのが残念。設定を変え、登場人物を変えても呪われた血を持った男が人殺しの螺旋に嵌り、次々と周囲の人間を殺していくという物語は基本的には変わらない。従って読者はすでに結末を知っているような状態でプロセスだけが違うのだ。
いやそのプロセスももはや同じだ。騙し騙されながら自分の生き抜く道を模索する男が結局のっぴきならない状況まで追い詰められ、窮鼠猫を噛むが如く、どんどん人を殺していく。これではギリギリのサヴァイバルが活かされない。主人公が自身に残った最後のこだわりを守るためにボロボロになってもそれを守ろうとするのに、結局はとち狂ってそんなこだわりがどうでもよくなり、破壊しつくさねばならなくなる。これでは登場人物はただの殺戮マシーンである。毎度同じ話を読まされているように感じるこの構成をいい加減変えてくれないだろうか。

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