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ミステリの祭典

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らせん階段

作家 エセル・リナ・ホワイト
出版日2003年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点
(2017/07/03 09:40登録)
ヘレンが屋敷でひとり怯える心理サスペンスを想像していたが、読んでみるとまったくそんなことはなかった。弱々しく震えながら館で生活する、映画「レベッカ」(ダフネ・デュ・モーリア作)のヒロインとは、まるでちがっていた。
それに、ヘレンと他の登場人物との会話が意外にはずんでいて、なんだか楽しそうな感じもする。本著者の別作品、「バルカン超特急」からすれば、そんな作風も想像がつかぬわけではない。
ゴシック・サスペンスとはいうものの明るめの雰囲気や、ちょっと怖がりで、ちょっと愛らしく、ちょっと抜けているヘレンのキャラクタにも、拍子抜けした。
でも決して苦手なスタイルではない。

ただ、中だるみというか、ほとんどたるみっぱなしのストーリーはいただけない。殺人発覚後、屋敷から出ていけないし、入れないというルールを作って楽しめる要素を提供してくれるが、ドキドキ感は足らない。終盤に突然の恐怖感とクライマックス、そして真相の判明。なるほどそういうことか。ありがちかな。

「バルカン」がたいしたミステリーでもないのに、なぜかしら楽しめ、気に入っていたので、本書にも少し期待した。結果はまずまずだった。映画のほうがおもしろいだろうなぁ。

No.1 6点 mini
(2013/10/18 09:56登録)
「バルカン超特急」は本は所持してるんだけど積読中
こちらの方が先に書かれているのでまず「らせん階段」を読んでみた
エセル・リナ・ホワイトはサスペンス小説作家として一応知名度は有るが、事実上は小説で有名になったというよりは単に映画の原作者として読まれているという印象だ
英米でも読まれているのは、ヒチコック監督作品として超有名な「バルカン超特急」と、3度も映像化リメイクされた作者のもう1つの代表作「らせん階段」の2作のみみたいな扱われ方だ
未訳で他にもう1作知られた作が有るが、それもチャンドラーが脚本を書いた映画の原作である

「らせん階段」は一言で言えば”ゴシックロマンス風サスペンス小説(のパロディ?)”である
狙われる若きヒロインのメイド、怪しげで思わせ振りな黒い影、閉じ込められた館の中、館の住人同士の心理的確執と葛藤
もう絵に描いたような設定で、絵に描いてはいないが実際に映像化されてるわけだしね
このヒロインの内面心理描写が読み処なのだが、何となくユーモア調に感じられるのは私だけだろうか、”パロディ?”と書いたのはそれが理由である
小柄な若きヒロインだけに他の住人やかかりつけの若き医師に頼りたいのだが、次第に八方塞になっていく過程が、どちらかと言えば切迫感と言うよりも半分笑ってしまうような筆致で描かれる
緊張感有るんだか無いんだか(笑)、でも暗い心理サスペンスを苦手な読者には合うかも(苦笑)
作者が活躍したのは本格黄金時代の只中、30~40年代前半にかけてなので、少々見え透いているとは言え最後まで真犯人の正体を隠すなど、サスペンス小説とは言えど館ものを好む本格派読者が読んでもそれなりに楽しめそうだ

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