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ミステリの祭典

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カットグラス
改題『星が降る』

作家 白川道
出版日1998年07月
平均点9.00点
書評数1人

No.1 9点 Tetchy
(2012/02/21 23:28登録)
人生の酸いも甘いも経験した大人たちを書かせたら一級品の作者による初の短編集。

とにかく胸を打つ。主人公や登場人物たちはどれも40代以上。そう、もはや限られた未来しか残されていない人々だ。
人生も半ばまで来た男と女たちの何かを諦めた思いが行間から伝わるのが非常に心に染み渡る。全てが丸く収まることはなく、良しとなるにはお互いが何かしらの痛みを伴わなければならない。理想に描いていた未来とは違った人生だがそれでも一生懸命に明日を生きる。夢とか理想とかそんなものではなく、生きていくために現状に甘んじ、しがみつく。そんな人間たちの物語が本書には収められている。

若い頃に読んでいたならばこの作品の味はこれほどまでに深く心に染み込まなかっただろう。
昭和の香りがするといえばそれまでだが、読み終わった後、暗い部屋でアルコールを片手にじっと浸りたくなる、大人の小説集。その味は一級であることを保証しよう。

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