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ミステリの祭典

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見知らぬ顔
ウィリアム・モンク警部&へスター・ラターリー

作家 アン・ペリー
出版日1995年09月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2016/09/23 00:41登録)
(ネタバレなしです) 1990年に発表された本書はクリミア戦争直後の英国を舞台にした本格派推理小説で記憶喪失の男ウィリアム・モンクシリーズの第1作です。職業が警部であることを教えられたモンクは記憶喪失が回復しないまま職場復帰し、クリミア戦争からの帰国軍人であるジョサリン・グレイ殺しの犯人探しをしながら同時に自分自身を取り戻そうとするのが本書のプロットです。モンクの部下エヴァン、看護婦ヘスター、ジョサリンの伯母キャランドラなど魅力的な人物が多数登場して読み物として非常に面白い作品です。この時代ならではの行動が事件の引き金になっているという背景は歴史ミステリーとして巧妙だと思います(この「行動」は横溝正史の某有名作品でも使われていましたね)。

No.1 8点 mini
(2013/02/01 09:57登録)
先日29日に同じ創元文庫からマクロイ「小鬼の市」と同時発売でアン・ペリー「護りと裏切り」が刊行された
どうせ注目はマクロイだけに集まっちゃうんだろうけど、あの記憶喪失探偵モンク警部シリーズが今になって刊行されたのにはちょっと驚いた、見捨てたわけじゃなかったんだな創元

現代英国ミステリーは歴史ミステリーの宝庫である、例の森事典で森英俊氏が”英国歴史ミステリー御三家”と呼ぶエリス・ピーターズ、ポール・ドハティ、リンゼイ・デイヴィスの3人に加えて、それらに次ぐアランナ・ナイト、そしてこのアン・ペリーの2人を加えた5人衆が森事典で紹介されている
ただしこの中でリンゼイ・デイヴィスだけは本格じゃないので森事典の本格派編じゃなくて姉妹編の方に載っている
上記の5名に加え最近創元が精力的に紹介しているピーター・トレメインを加えて英国歴史ミステリー六歌仙ってところか、あと1人入れれば七福神だな(笑)

アン・ペリーには作者を代表するもう1つのシリーズであるピット警部シリーズが集英社文庫から2冊、そしてモンク警部シリーズが創元文庫から2冊出ただけでずっと翻訳が止まったままだった
地味な作風だしそもそも日本の読者に歴史ミステリーというのがあまり受けなかったのが原因なのかなぁ、だから今回モンク警部シリーズの3作目が今頃になって翻訳刊行となったのは意外だった
そのシリーズ第1作目が「見知らぬ顔」である、題名の由来はもちろん探偵役のモンク警部が記憶喪失である事から来ている
この設定が物語の中で最大限の効果を挙げており、単なる奇を衒った探偵役とは全く違う傑作である
地味ながらなかなか読ませるし、地味好きな私としては嗜好にかなり合う作品である

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