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ミステリの祭典

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疑惑の場

作家 パトリック・クェンティン
出版日1962年01月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 4点 人並由真
(2018/04/11 03:03登録)
(ネタバレなし)
 「ぼく」こと作家志望の19歳の若者ニコラス(ニッキー)は、大女優で大物歌手でもあるアニー・ルードの息子だった。寡婦のアニーは数名の友人や知人を自らの取り巻きとして後見し、ニコラスとともに邸宅に同居させていた。しかし最近はアニーの仕事も減り気味で、一同を養う家計はピンチになりかかっていた。そんな矢先、アニーを慕う監督兼プロデューサー、ロニー(ロナルド)・ライトの妻で女優のノーマ・デラニーが墜落死した。その結果、ノーマが演じるはずだった話題の史劇映画の主役を、アニーが引き継ぐ可能性が浮上する。ニコラスそしてアニーの周囲の取り巻き連中の胸中に、実はアニ-がノーマを…?! という疑念が生じていき…。

 クェンティンのノンシリーズ編。大昔に購入した古本を、とにもかくにもクェンティンならそれなり以上に楽しめるだろうと期待して引っ張り出した。しかしわずか200ページ弱の紙幅ながら、話に起伏が少なくてかなり退屈で読了までにもたついた。
 もしもアニーが殺人犯として逮捕されたら現在の安寧なモラトリアム(パラサイト)生活が破綻するというニコラスたちの本音は、まあリアルといえばリアルだが、読者のこっちからすると「ああ、そうですか」の世界だし。
 この辺は、事件の真偽はどうあれ、アニーが殺人犯だと思い込んだニコラスたちをもっとドタバタさせるてその流れでサスペンスを語るのが作劇の定石と思うのだが、そういう方向での面白さはほとんど見せてくれない。
 それでも後半、もうひとつの大きな事件が生じてからはちょっと面白くなりそうだったが、しかし話の結構が組み変わってくると、今度は別の意味での強引さが見えてくる(この辺はネタバレになるのであまり言えないが)。
 切れ味の悪い技巧派フランスミステリに接したような感触で、これまでに読んだクェンティンの長編のなかでは、残念ながら本書が一番つまらなかった(まあクェンティン作品は、まだ未読のものも何冊もあるけれど)。
 中桐雅夫の翻訳も、ワンセンテンス内にまったく同じ言葉を複数つかうなど今回はどうも素人くさい。この人の訳文は、良いときとそうでないときがあるように思える。
 とまれ舞台が芸能界・映画界にもからむので、グレース・ケリーやシナトラ、ジョン・ヒューストンが実名でカメオ出演するのはちょっと楽しかったかな。
 
 評価は作者が他の人だったら5点をあげたかも知れないけれど、好きな作家だからあえてちょっと厳しめで、この点数に。

No.1 5点 こう
(2012/02/09 23:57登録)
 ホイーラー単独になって第3作目です。ハリウッドを舞台にしたサスペンスで往年の名女優の一人息子が主人公で彼の1人称で語られるストーリーです。
 安易な殺人が目立つのと主人公を含めた登場人物の誰にも共感できないため他の力作のようなストーリーの深みがない印象です。一見意外な犯人を据えているようにも見えますがストーリーが単調なため誰が犯人でもいいような読後感で残念でした。

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