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ミステリの祭典

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キャバレー

作家 栗本薫
出版日1983年09月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 おっさん
(2011/10/12 15:47登録)
プロのジャズマンを目指して、大学の仲間たちから飛び出し、場末のキャバレーで実戦をつむ、サックス奏者・矢代俊一。
そんな俊一に「LEFT ALONE」を何度もリクエストする、店の常連客でヤクザ社会の実力者・滝川。
緊張感を孕んだ二人の不思議な関係は、やがて友情へと変わっていくが、俊一の才能が波紋となり、それはヤクザ同士の抗争へとエスカレートしていく。
ギリギリの土壇場で、滝川が迫られた決断とは・・・?

昭和58年(1983年)作。今回が初読です。
ブック・ガイド『本格ミステリ・フラッシュバック』(東京創元社)の、栗本薫の紹介コメントのなかでは「映画・舞台化もされたハードボイルド」(千街晶之)としてミステリのくくりに入れられていますが、“ハードボイルド”の解釈は十人十色としても(そのへん、私自身も、今後、ハメットやチャンドラーを読み返しながら、おいおい考えていきます)これはミステリではないよなあ。
でも。
ミュージシャンの成長小説のベースに、モチーフとしてヤクザ映画の世界観を取り込んだ効果は、見事なものです。
後年の、歯止めが利かなくなった栗本作品と違って、あくまで“男の友情の物語”に踏みとどまっているのも良し。
個人的には、ヤクザの滝川の心情吐露はウエットにすぎ、主人公との対比の意味でも、そこは“言わぬは言うにまさる”書き方、つまりハードボイルド・タッチで決めて欲しかった気がしますが・・・それをやったら栗本薫じゃないしなあw
あと、クライマックスでダイ○マイ○を使うんだったら、伏線張っとけよお、という突っ込みは、いちおう入れておきます。ミステリ作家なんだからさあw

で。
これはマジなコメントですが、もし、小説を書いて、そのなかで音楽を表現したいと考えている人がいたら、本書はマストです。音のうねり、その変化を、キャラクターの内面描写で感じさせるテクニックは素晴らしく、格好のお手本になると思います。
点数は、本サイトで「これはミステリではない」ものを(参考作品として)取り上げる、若干のためらいから8点にとどめますが、本書はおそらく、作者のおびただしい小説群のなかでも、最上ランクに属する一篇です。
感動しちゃったしね。読んで良かったです、ハイ。

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