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ミステリの祭典

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パワードスーツ

作家 遠藤武文
出版日2011年08月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 名探偵ジャパン
(2017/11/29 17:55登録)
今から少しだけ先の近未来。サイバニクス・ラボラトリー社の営業、大和健斗は、自社の製品「パワードスーツ」売り込みのため地方都市を訪れていた。「パワードスーツ」とは、人間が着込んで使う強化服の一種で、装着者の体力を何倍にも向上させることができる。いち早く建設現場などに導入され、重機の代わりを果たしているこのパワードスーツを、大和は病院の介護部門にも売り込もうとしていたのだった。病院事務長の樫村へ接待を施した翌日、大和は直属の上司である高槻が、法律で製造が禁止されている、パワードスーツの軍事転化版「アーマードスーツ」の開発に秘密裏に着手していたことを知る。

表紙めくるといきなり「本書には、ある仕掛けがあります。注意してお読み下さい」と警告が書いてあります。が、そんなに気にする必要はないでしょう。2011年刊行ながら、今の今まで書評が付かなかったことから察せられるように、そんな大した(失礼)仕掛けではありません。

肝心の内容は、上記の通り、飛躍しすぎず、リアルとワンダーのバランスを保ったSFという、こういったものが好きな人にはたまらない設定が魅力なのですが、生かし切れなかったように思います。一応、高齢化社会に対する問題提起のような内容も含んでいて、社会派SF的な側面もあるのですが、この作者の本は初めて読んだのですが、読みにくいです。登場人物も、役割通りに作者に動かされているだけという感が拭えず、「お前らがロボットなのか!」と言いたくなってしまいました。
近未来リアル派SFと本格ミステリの融合を果たそうという試みだったのかもしれませんが、惜しい作品になってしまいました。

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