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ミステリの祭典

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グルーバー 殺しの名曲5連弾
人間百科事典オリヴァー・クエイド/旧訳題『探偵 人間百科事典』

作家 フランク・グルーバー
出版日1977年09月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 mini
(2016/01/18 10:19登録)
タイミングが遅れてしまったが、年初に論創社からケネス・デュアン・ウィップル「ルーンレイクの悲劇」とフランク・グルーバー「噂のレコード原盤の秘密」が刊行された、どちらも当サイトで未登録だけど本格じゃないからかな?
ウィップルは横溝正史翻案の「鍾乳洞殺人事件」の原作者だが、所詮マイナー作家で私にはどうでもいい作家だ
グルーバーのは作者のメインシリーズであるフレッチャー&クラッグものだが、そもそもグルーバーの新刊って同シリーズ第1作目であり早川ポケミスで出た「フランス鍵の秘密」以来だ、論創やるなぁ

便乗書評には本来なら同シリーズから選ぶべきなんだろうけど、中短編集という事で手軽に読めそうなのでこちらを
作者がフレッチャー&クラッグものを書き出す以前に『ブラックマスク』誌などに書いていた中短編からの日本独自セレクトで、オリヴァ―・クェイドとチャーリー・ボストンのコンビシリーズである
クェイドは”探偵人間百科事典”の異名を持ち質問に何でも答えてしまうが、その知識の元になっているという百科事典を売り歩く香具師まがいのセールスマンで、この点フレッチャー&クラッグシリーズの原型とも言える
内容的には当サイトでkanamoriさんが的確に御指摘されているように、見かけは通俗ハードボイルド風だが謎解き色が強く私もジャンル投票は本格にした
通俗的で本格色が強いという特徴は同時期に活躍したジョナサン・ラティマーと共通する
「鷹の巣荘殺人事件」や「不時着」は人里から隔絶されたクローズドサークルで、「不時着」なんて雪の山荘テーマそのものである
私はクローズドサークルには何の興味も無い読者なのでそういう意味での舞台設定的な魅力は感じないのだが、プロの犯罪者まで登場させながらそのまま真犯人なわけはなく(それだったら面白くないわけで)、プロの悪党をプロット上の狂言回し的に用いて本質的には本格派謎解きに持ち込む独特の味わいが魅力だ
あと書名だが、kanamoriさんも御意見に私も賛成で、講談社文庫版になって改題されたが、旧番町書房版の題名『探偵人間百科事典』のままでの文庫化が良かったのになぁ

No.1 6点 kanamori
(2012/09/04 17:59登録)
”人間百科事典”ことオリヴァー・クエイドを探偵役に据えた連作ミステリ。
書籍のセールスマンが肉体派の相棒をつれて全米中を回りながら殺人事件に巻き込まれるという基本プロットは、のちのフレッチャー&クラッグの長編シリーズと同じです。違うのは、”あらゆる質問にも答えることができる”という特殊能力をクエイドが持っている点で、毎回のように百科事典から仕入れた知識と機転を使って窮地を脱するのが読みどころの一つです。
語り口は通俗ハードボイルドですが、設定と謎解きのプロセスは本格ミステリで、たとえば、「鷲の巣荘殺人事件」は、脱獄囚4人組に乗っ取られた避暑地の山荘風ホテルという(石持浅海のデビュー長編風の)クローズド・サークルものですし、「不時着」は、雪山に墜落した小型飛行機の乗員乗客たちが山小屋で殺人事件に遭遇するという話でいずれも設定が魅力的です。
また、中編の「ドッグ・ショウ殺人事件」は正統フーダニットでクリスティが好んで使うようなミスリードが巧妙で、これが編中の個人的ベスト作品。
一つ不満な点は、音楽ミステリかと誤解しそうな文庫版タイトルで、やはり当初のタイトル「探偵 人間百科事典」が惹きつけるものがあっていいです。

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