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ミステリの祭典

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三人色若衆 人形佐七捕物帳

作家 横溝正史
出版日1984年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 おっさん
(2011/04/25 12:13登録)
春陽文庫の<人形佐七捕物帳全集>第8巻です。収録作は――

1.万歳かぞえ唄 2.神隠しばやり 3.吉様まいる 4.お俊ざんげ 5.比丘尼宿 6.幽霊姉妹 7.浄波璃の鏡 8.三人色若衆 9.生きている自来也 10.河童の捕り物

あまりパッとしません。
この手の短編集は、巻頭作が面白いとはずみがつきますし(四巻がそう)、表題作が傑作だと印象が強く(七巻は文句なし)、全体のレヴェルは平均的でもトリを飾る作が余韻を残すと、点数がアップして感じられます(二巻ですね)。
本書の場合、巻頭の1と表題の8がダラダラと長く、トリの10も後味が悪い。三重苦ですw
気をとりなおして、しいて推薦作をあげるとすれば・・・
大店の一人娘の懐妊が発覚し、責められても相手の名を告げぬまま、彼女は男児を出産して死亡するが、その後、我こそ父親なりと三人の男が名乗り出てきて、という騒動記の3でしょうか。物語(ミスリード)と謎解き(手掛りの置き方)のバランスはいいほうです。
しかし、このパターンには、すでにレヴューした「くらやみ婿」という極めつけがありますから(発表は「吉様まいる」のほうが先とはいえ)、比べるといささか粒が小さい。
説得力にはひとまず目をつぶり、ミステリ的な趣向からピックアップすれば、神隠しにあった娘が次々に殺されていく2と、七年の時を隔てて怪盗が暗躍する9は、事件の連続性に横溝正史らしいアイデアを見ることができます。とくに2は、鬼畜のような犯人像が良くも悪くも強烈。
犯人像――と書いたついでに。うん、これはやはり書いておこう。

本書の読後感を芳しくないものにしている一因に、一部の作品の性対象の問題があります。
ぶっちゃけ、ホモとレズなのですが、これを作者は、単におぞましい行為、ゆがんだ関係と決めつけて、悪人の造型や事件の異常性の演出に利用しています。
私は同性愛支持者ではありませんが、愛のカタチとして理解する、もう少し公平な視点もないと(行き過ぎると、栗本薫になってしまうとはいえw)、興味本位の通俗的な意匠にとどまり、作品の価値を下げるだけに思えます。

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