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ミステリの祭典

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歪められた男

作家 ビル・S・バリンジャー
出版日2005年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2021/02/28 11:12登録)
バリンジャーと言えば『歯と爪』『消された時間』の全編カットバックを駆使した2作しか読んでいない人がかなり多いと思われますが、自分もそうでした。本作は作者最後期のスパイ小説で、上述2作のようなアクロバティックな構成を期待すべきではありません。冒頭の「読書の栞」にも北村薫の、バリンジャーの特質は意外性より「哀しみ」にあるとする意見を引用したりして、本作を読む人にそのことを警告しています。
しかし、実際に読み始めてみると、事故で都合よい期間だけの記憶喪失になり、さらに整形手術で顔が変わって(歪んで)しまった男の一人称で語られるプロットやケイツ少佐の正体は、なんとなく上記2作を思わせる感じもあります。しかし、次から次へと関係者たちが死んでいく展開は、おもしろいとは言えるのですがやはり相当なご都合主義ですし、あいまいな終わり方も今一つぴんと来ませんでした。

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