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ミステリの祭典

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ママ、死体を発見す
ジプシー・ローズ・リー

作家 クレイグ・ライス
出版日2006年04月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2016/07/11 01:16登録)
(ネタバレなしです) 実在のエンターテイナーであるジプシー・ローズ・リー(1911-1970)の名義で1942年に出版された本書はリーの真作なのかライスによる代作なのか完全には証明されていませんが、多彩な登場人物が織りなすどたばた描写がライス説を有力なものにしています。いろいろな出来事が既に起こった状態で物語が始まるので最初は混乱しますが第6章でようやく整理されます。喜怒哀楽の振り幅が大きいライスにしては本書は「哀」の部分がほとんど描かれず、一本調子なところもありますがユーモア本格派としての水準には達しています。

No.1 6点 mini
(2015/07/24 09:58登録)
本日24日に原書房ヴィンテージミステリとして、クレイグ・ライス「ジョージ・サンダース殺人事件」が刊行される
原書房ヴィンテージはここ暫くはマイナー作家の刊行が続いていたが、クェンティン、ライスとメジャー作家に戻った感じだ、ただし両者とも本来は別名義作品だけれど

クレイグ・ライスには出版契約事情なのかいくつかの別名義が存在し、例えばマイケル・ヴェニング名義のメルヴィル・フェアものなどは、ライスの別の面が垣間見えるシリーズとしてちょっと話題になった
しかしライスの別名義の話題性では何と言ってもジプシー・ローズ・リーとジョージ・サンダース名義の2つである
この両名義には共通点が有る、それは2人とも実在の人物であり、そのゴーストライティングが新垣、じゃねえよライスだと言われているのだ
”言われている”と微妙な言い回しなのは、100%完全な情報ではないからだが、まぁ業界ではライス代作説が通説となっているのである
ライスがちゃらんぽらんな性格だったのは有名だが、実は森英俊氏の解説を読んで初めて知ったのだが、紛失したりとかライスのいい加減な契約書の管理が原因で、作者没後になかなか本国アメリカでも復刊されなかったのはそういう権利関係の事情が有ったらしい、ライスは当時の人気作家で決してマイナー作家だったのが理由じゃないのだ
今回原書房から出たのは、実在した俳優ジョージ・サンダースが書いたという建前のライスの代作品(そういう事になっている)で、おそらく売らんがための話題性作りで、当時のアメリカの出版事情が偲ばれる

もう1つの、いやサンダース名義以上の話題性だったであろうのが実在した伝説のストリッパー、ジプシー・ローズ・リーの代作である、その第1作目が汎書房で昔に出た「Gストリング殺人事件」で、シリーズ第2作目が以前に論創社から出た「ママ、死体を発見す」だ
これも森氏の解説を読んで初めて知ったのだが、ライス代作説には反対意見も有るみたいで、その辺の事情が詳しく書かれている
ただ私がこの作を読んで受ける印象では、これ書いたの絶対ライスでしょ!、こんなの書けるのライスしかいねえよ
題名にもあるけど序盤なんかママに振り回されてローズ・リーの存在感が霞むくらい、ドタバタ劇と謎解きとの絶妙なバランス、やはりいつものライス節だよなぁ
また真犯人は私は見破ったのだが、それというのも私がライスのいつもの犯人隠蔽パターンを知っていたからだ

翻訳権利上の問題も有るのかも知れないが、中古市場でも入手が難しい「Gストリング」の新訳復刊を各社御検討願いたい

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