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ミステリの祭典

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シンデレラとギャング
ウールリッチ傑作短編集3

作家 コーネル・ウールリッチ
出版日2003年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2016/02/22 00:08登録)
白亜書房版のウールリッチ=アイリッシュ傑作短編集。3巻目の本書には、長編第1作「黒衣の花嫁」刊行の直前にあたる、1939年から40年に書かれた中短編6編と、最初期の非ミステリ短編1編が収録されています。

「黒い爪痕」は、長編『黒いアリバイ』(未読)の原型となったスリラーで、中盤のサスペンスはそれなりに読ませますが、逃げた黒豹の扱いが見方によってはバカミスのように思えてしまう。
「ガラスの目玉」は、小学生の男の子が手に入れた義眼から隠れた犯罪を突き止めようとする冒険譚。どことなく仁木悦子の子供探偵ものに似た味わいがあって、ハートウォーミングな結末が良い。
表題作の「シンデレラとギャング」では、背伸びした16才の少女がギャングの抗争の渦中に巻き込まれる。ギャングの符丁をめぐる誤解が醸し出すユーモアと、中盤のサスペンス、人情話という三つの要素がバランスよく配され、ラストシーンではニヤリとさせてくれる佳作。「ガラスの目玉」もそうですが、こういうのを読むと、かつてアイリッシュの多くの作品が子供向けにリライトされていた理由がよくわかります。
「アリスが消えた」「送っていくよ、キャスリーン」「階下で待ってて」は、創元版で既読のため今回はパス。いずれもアイリッシュらしさが発揮されたサスペンスですが、(作品の発表順に収めた叢書とはいえ)同じようなプロットの作品を3編並べるのはいかがなものか、という感もあります。

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