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ミステリの祭典

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くらやみ婿 人形佐七捕物帳

作家 横溝正史
出版日1984年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 おっさん
(2011/02/22 10:15登録)
春陽文庫の<人形佐七捕物帳全集>全14巻の、ちょうど半分にあたる7巻目。その収録作は――

1.春姿七福神 2.血屋敷 3.女虚無僧 4.武者人形の首 5.狸御殿 6.化け物屋敷 7.雷の宿 8.鶴の千番 9.くらやみ婿 10.団十郎びいき

表題作の9が傑作です。
呉服屋の総領娘を孕ませたのは誰? という、書きようによっては煽情的な謎を、ロマンチックな演出(町中あかりを消して真っ暗になる、くらやみ祭りというセッティング、お堂の中の濡れ場を印象づける、蛍火のイリュージョン)で昇華し、そこに新たな謎をかけ合わせていく展開の妙。意外性に富んだ、その構成と話術は、佐七シリーズの最良のものだと思います。十年ほどまえ、わけあって佐七全話を通読したさいも好印象で、細部までストーリーを記憶していましたが(忘れている話のほうが多いんですよ)、場面場面が生き生きしているので、読み返してもじつに楽しかった。
芝居のヒイキ筋の対立を、タイム・リミットのある謎解きでまるくおさめる、人情噺としての後味の良さでは、10もいいセンいってますし、トリッキーな趣向では、金ピカの御殿で美人のお酌で酔いつぶれた辰と豆六が、目を覚ましてみると、御殿はボロボロに立ち腐れていた――という怪異からスタートし、和風のダイイング・メッセージを盛り込んだ殺人につなげる5が、要注目です。
表題作のみで判断すれば10点満点でもO.K.なのですが、本全体として見ると、最初のほうの作が、若干テンション低めで説得力に欠けることを考慮し・・・それでも堂々の8点認定。お薦めの巻です。

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