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ミステリの祭典

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北村薫のミステリー館
北村薫編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2005年09月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 kanamori
(2012/11/02 20:50登録)
「ミステリー」の範囲をかなり広義に捉えていて、読書の達人・北村薫氏らしい”よくこんなもの見つけてきたな”というような作品が含まれていますが、ここではミステリーのプロパー作家の作品を中心に寸評します。

ベイジル・トムスン「フレイザー夫人の消失」は、有名な都市伝説”パリ万博綺譚”をほぼ忠実に小説にしたもの。大昔に学習雑誌の付録かなにかで読んで、魅力的な謎と意外な真相で忘れられない物語です。ただ、本書では母娘の旅程がナポリ経由となっているが、記憶ではインドだったような気がする。
ヒュー・ペンティコーストのデビュー作「二十三号室の謎」もホテルの部屋からの人間消失という点で同じだが、こちらはガチガチの不可能トリックものの本格パズラー。錯覚の使い方がディクソン・カーの某作に通じるものがある。
あと、ともに再読ですが、ヘンリ・セシルのメルトン先生ものの落語の様なオチや、パトリシア・ハイスミスの最後の一行の衝撃度も印象に残ります。巻末対談で、宮部みゆき氏のこのハイスミス作品に対する感想「どっちかにしてあげてくださいー」には笑った。

No.1 7点 mini
(2011/02/01 10:08登録)
ええぃ、ついでにもう一つ北村編のアンソロジーだ
新潮文庫だが何巻かの企画ではなく単発なようで、多分同編者の『謎のギャラリー』の姉妹篇という位置付けかも
北村編アンソロジーとしては角川文庫『本格ミステリ・ライブラリー』よりもこっちの方が楽しめた、ジャンルの制約が無い分やりたい放題だし
全体の構成もしっかりしていて、最初の章などは巻頭漫画風で、若干値が上がってもいいから巻頭口絵カラー頁にして欲しかったな
既読なのが少ないのもグッドで、私が既読だったのは唯一ハイスミス「クレイヴァリング教授の新発見」だけだが、この”かたつむり”短編は有名過ぎるもんな
知らない作家が多い中で既知な作家は、H・セシル、H・スレッサー、ペンティコーストあたり
セシルのは独立した短編ではなく連作短編形式の長編『メルトン先生の犯罪学演習』からの抜粋、私は『メルトン先生』の方が読むのが後だった
ペンティコーストってメジャーにはちょっと足りないがアンソロジーにはよく採用されてるよな、もう一つ読まれて無いのは長編に決定打が無いからだろう、E・D・ホック編『密室大集合』収録の「子供たちの消えた日」の作者なんだが
さてこのアンソロジー中で抱腹絶倒なのが日本変換昔話「少量法律助言者」
これは何かと言うと、昔話を翻訳ソフトで一旦英語に翻訳し、それを和訳で戻すというパターンだ
今ではこんな遊びは珍しくも無いんだろうが、このアンソロジーが刊行された頃は面白かったに違いない
題名の意味は何だって?それはねぇ”少量=一寸、法律=法、助言者=師”なんでしょうな、きっと
”法師”に相当する英単語って無いんかい
良い意味で編集者としての北村ワールド全開ですな

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