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ミステリの祭典

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坊主斬り貞宗 人形佐七捕物帳

作家 横溝正史
出版日1984年05月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 おっさん
(2011/01/27 18:00登録)
春陽文庫の<全集>も、6巻目に突入。
収録作は――1.銀の簪 2.夢の浮橋 3.藁人形 4.夜毎来る男 5.離魂病 6.風流女相撲 7.坊主斬り貞宗 8.風流六歌仙 9.緋鹿の子娘 10.本所七不思議
前巻までは、各12話でまとめられていましたが、本書からは10話構成となります。これまでは、ヴォリュームのある中編サイズがひとつ入っていて、それが表題作、というパターンだったのですが、ここからは、トータルの話数が減った代わりに長めの話がもうひとつ増えた(この巻でいえば、7と10が中編サイズ)、とまあ、そういう違いですね。
セカンド・シーズンの開幕ですw
人形佐七ものは、戦前、戦中、戦後と書きつがれています。この<全集>では、それがシャッフルされているわけですが、本書の1~4は、戦後第一作から第四作までが順に並んでいます。
幕府の変革にともない、佐七を贔屓にしていた与力の神埼が失脚、十手捕縄を返上していた佐七が、神埼の復職に応じて復帰を果たすのが1。一の子分・きんちゃくの辰五郎が江戸に戻って来るのが2。そして、辰五郎の弟分の浪花っ子・うらなりの豆六も帰ってきて“ファミリー”が完全復活するのが3。
しかし本書のベストは、なんといっても戦前作品の5と8です。
佐七と生き写しのニセ者が暗躍、とうとう殺しの下手人として捕縛されてしまった佐七の無実の罪を晴らそうと、ファミリーが奔走する5は、シリーズ読者のツボを突きまくる展開がたまりません。ご都合主義を逆手に取った、快作。
いっぽう短編ミステリとして見事なまとまりを見せるのが8。限定された小グループ内の連続殺人をサスペンスフルに描き、解決までのプロセスも、海外古典を消化した本格ミステリの趣向も水際立っています。
表題作の7が水増しで面白みに欠けたり、巻末の10が投げやりな終わりかたで興をそいだり、と、長めの話がいささか足を引っ張っていますが、「離魂病」に「風流六歌仙」という、まったく別種のふたつの輝きが美しく、一読をお薦めしたい巻なので、ここは甘めに採点w

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