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ミステリの祭典

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黒船屋の女

作家 栗本薫
出版日1982年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 おっさん
(2011/01/23 19:19登録)
夜の散歩が日課の、孤独な画家・寺島が、悲鳴を聞きつけ飛び込んだのは、凄惨な犯行現場――古びた洋館に押し入った浮浪者が、画商の主人を刺し、その妻を暴行している最中、刺された画商が刃物を拾い、浮浪者を後ろから刺し殺して絶命――だった。
生き残った女・紫乃は、竹久夢二の描く絵を思わせ、その退廃的な雰囲気で寺島を魅了するが、彼女のまわりでは、その後も次々と事件が起こり・・・

昭和57年(1982)のノン・シリーズ長編です。
高度経済成長下の日本を背景にしていますが、“現代”の事件から浮かび上がる、戦中・戦後の画壇の愛憎劇が作品のトーンを決定しており、ヒロインの肖像もあいまって、“時代物”のムードで染め上げられています。
現実とおりあえない主人公が、魅力的な“異界”と触れ合い、そこで生きたいと願いながら最後ははじき出される――栗本薫の王道パターン。
そして、見切り発車したストーリーを、イマジネーションと話術だけで引っ張っていくため、ミステリとして説得力に欠けるのも相変わらずw
一例をあげると、納戸でひとり絵に見入っていた主人公が、背後から殴られ、昏倒するエピソード。唯一の出入り口である引き戸をあけると大きな音がするはずなのに、そんなこともなく、犯人はどこから現れたのか? という一種の密室状況なのですが――いくらなんでもその方法では、気配で気付かれるでしょう? というか、そもそもなんでそんなバカな襲い方をする必要があるわけ?
いや~、この人の場合、いつも採点は悩ましいw
ヒロインの魅力が薄れていき、終盤、別なキャラクターに比重が移る、それにともなう逆転、芸術家ものとしての凄み――をひとまず評価しますが・・・“女”を描くはずが“男”の小説に着地してしまったのは、この作者の資質がどのへんにあるかを、如実に物語っていますね。

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