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ミステリの祭典

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四枚のクラブ一
レオ・カリング 『世界大衆文学全集19 スペードのキング 四枚のクラブ一』改造社・昭和4年6月3日発行)

作家 S・A・ドゥーセ
出版日不明
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 おっさん
(2010/12/20 15:07登録)
タイトルは、四回にわけて被害者に送られてきた、脅迫状としてのトランプのカード「クラブのエース」の意。
1918年に刊行された、著者の第五長篇ですが――
金持ちから盗んで貧乏人に与える、義賊きどりの青年(いっぽうで探偵の才もあり、幾つかの難事件を解決して警察の信任を得ている)と、カナダからスウェーデンにやって来た弁護士(もとロンドン警視庁の刑事)が、微妙な対立の構図をとりながらも、遺産相続にまつわる入り組んだ謀略と死体消失の謎に挑む、異色のストーリー。
小説全体の趣向は、ドロシー・L・セイヤーズの作品Sとか、栗本薫の作品T3とか、乱歩中編のNとか・・・ある種のミステリ的遊びの先取りではあります(古風な作家だとばかり思っていると、ときにオヤッというアイデアを盛り込むんだ、この人は)。
また事件の核心を見れば、失敗に終わった『スペードのキング』の改良版と言えなくもない(例によって、実はそっくりさんがいました、とか、ある人物は――ストーリーの都合上――急に病気で死にました、とか、臆面もないところはありますが)。
しかし、真犯人以外の人物の動きを錯綜させることで、真相をカモフラージュするのがドゥーセの十八番とはいえ、今回はちと、ゴタゴタ盛り込みすぎましたね。中だるみがひどく、ラストのサプライズも不発気味。
導入部で意味ありげに描かれた、義賊青年のアウトローぶりが、肝心のお話にほとんど反映されないで終わるのも、なんだかなあ~ですね。すわ、ドゥーセ版ルパンの創造か、こりゃ怪人対巨人か、と期待したのに、不完全燃焼でした。
ストックが尽きたので、この作家に関しては、ひとまずここまで(もしテクストが入手できれば、ファースト長篇の『生ける宝冠』は、いつか取り上げたいですが)。

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