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ミステリの祭典

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遠眼鏡の殿様 人形佐七捕物帳

作家 横溝正史
出版日1984年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 おっさん
(2010/12/14 19:45登録)
春陽文庫の<人形佐七捕物帳全集 2>です。
<全集>と銘打っていますが、編年体の構成ではなく、どの巻も、正月・春・夏・秋・冬と、事件の背景が一年を通して移り変わっていくように、歳時記ふうに編集されていますから、巻数に関係なく手にとっても、問題はありません。
収録作は――1.屠蘇機嫌女夫捕物 2.福笑いの夜 3.雛の呪い 4.すっぽん政談 5.五つめの鐘馗 6.遠眼鏡の殿様 7.白羽の矢 8.猫姫様 9.たぬき汁 10.冠婚葬祭 11.どもり和尚 12.雪女郎
表題作の6は、逢引きの現場に射かけられた矢がのちに凶器に使われる話で、金田一ものの短編「猟奇の始末書」の原型なのですが・・・設定のわりにミステリ的工夫が乏しいのを補う、作者のサービス精神(愛欲シーンw)が裏目に出て、どうも後味が良くありません。
大人の“お色気”は、シリーズの特色のひとつですが、親分とあねさんのお約束の喧嘩から、意外すぎる展開を見せる5のように、ユーモアと一体になっているとき、もっとも効果をあげていると思います。
集中の傑作は、これまた佐七ものの特色のひとつである怪奇趣味(死者の復讐、人間ばなれした凶行)と、余韻を残す人情噺のバランスが良い、12でしょう。
シリーズ自体のベスト10にも入れたい、この「雪女郎」がトリをつとめていることで、点数も一点アップ。

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