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ミステリの祭典

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推理日記Ⅵ
佐野洋

作家 評論・エッセイ
出版日1986年07月
平均点9.00点
書評数1人

No.1 9点 Tetchy
(2010/11/10 22:42登録)
相変わらず厳しい論調で各作家を3枚にも4枚にも下ろしてしまう。失われる日本語を平成の世に正しく伝える最後の長老かのような微に入り細を穿つ、その選文眼は今回も健在だ。やはりこういうのは非常に勉強になるし、編集者や校正の方々にとっても身が締まる思いがしているのではないだろうか。
しかしこれだけ色んな作家の慣用句や副詞の使い方を徹底的に取り上げ、論破しているのに対し、髙村薫の使い方に対してはあまり強い口調で間違いを正さなかったのは何故か?寧ろ新しい日本語を作ろうとしているのかといった表現で好評している傾向にある。佐野自身が彼女の文に惚れたのか、扱うテーマや小説観に惹かれたのかもしれないが、ちょっとこれは公正さを欠く。
しかし、佐野も年を取ったせいか、いつもなら感嘆を上げるその論調にいささか年寄りの説教めいた雰囲気を感じたのも事実。特に明らかに作家のミスであろう事を無理矢理好意的に解釈する所はちょっと物知り年寄りの皮肉のように受取れ、いやらしい。
しかし、昔はどこにも近所に口うるさい頑固親父がいたものである。佐野には命続く限り、文壇の頑固親父であって欲しい。

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