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ミステリの祭典

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のるかそるか

作家 梶山季之
出版日1977年07月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 斎藤警部
(2021/03/26 13:15登録)
“<オリンピック! どげなもんか知らんばってんが、なんかこう・・・・・・金もうけのにおいばしよる!>”

先制パンチ快調! 流石は訳知りの著者、素っ頓狂な方向にすっ飛んでも、リアリティはがっつり掴んだまま! タイムリーなのか逆タイムリーなのか、’64の東京オリンピック(実は第二回パラリンピックも)開催を巡って狙ってガッツリ儲けようと山師たちが躍起になり駆け回る物語。 ペテン行為とは言え、小説の絵空事だけにも見えない、泥臭い地道な努力や、人間臭い逡巡、失策からの機転を利かせた挽回とその根性、グリッティな手触りが魅力の昭和ど真ん中メモラビリア。 自由闊達に行こうじゃないか。。

「ユー、ホンコン? ホンコン・ジョー?」
「イエース、アイアム・香港ジョー。 マダム・キラー」
「おい、やっぱり香港ジョーじゃわいや。自分でそう言うとるけん」
( ↑ 何なんだこの会話w!)

不謹慎なヘレンケラージョーク… 明からさまな後進国差別… ハワイの土人だの、メッカチだの、チンバだの。 サノガベッチ(笑) ノウ・パンティとかシロクロとかww “ホステス達の、パンティが何色かを当てっこする賭けをはじめた”って何だよ(笑)。 武蔵小杉は連れ込み宿が多いって。。(隣の新丸子は今も少し..) まあ色んな意味で、いまこの瞬間に復刊するのは難しそうな、悩ましい一篇ですわいな。

「とにかく、オリンピックは、私たちが生きている間には、もう日本へ来ないかも知れないわね」
「よくわからないけど、なんだか、  (中略)   、胸がもやもやして来たわ。希望が湧いてきたみたい・・・・・・」

終盤寄り、意外な人物の再登場と、まさかの人間関係再構築(ここは熱かった。。。)。。おー、これは思わぬ展開で攻める攻めると思うとったら、、まさかのな。。エンディングが犯罪小説と呼ぶには微妙過ぎて、というか、これぁミステリの終わり方じゃない(笑)!最後は山師達が凄まじいエネルギーで衝突、爆発して色とりどりの破片が天空を舞う、、 わけじゃないのか。。 あの人物が実は“それどころじゃない”食わせ者で。。とか来るのかとキャッチャーミット嵌めて待っておったんじゃが。。最後、まさかテキトーにやった?!w はじけそうではじけない伏線もどき死屍累々とか。。 登場人物の産み出すアイデアは拡がりまくったが、物語のアイデアは、さほどか。。 作品としてちょーっと完成し損なってる気がするんじゃが、何しろ読んでる間は切れ目なく面白さに翻弄されっぱなし! 記憶に残る読み捨て本ってのは、こういうものなんだろうな、とその心理メカニズムが見えたような気になった。

「むろん、お譲りしますとも、ただで!」

さて巡り巡って二度目の東京オリ・パラがもう目の前。まして今回は、時代がテレにDXにSDG花盛りな(上に、いったん一年延ばしておいてほんとに開催されるのかもまだ怪しいような..)コロナ禍の空気の中で、山師の入り込むニッチもおッそろしく広々としてそうじゃないですか。。 どうですか、ご同輩。。

「どうな? あんたらも一つ、オリンピックで金儲けな、しんしゃったら?」

ポケット文春裏表紙、完成間もない旧国立競技場前にてラフな背広ネクタイ姿の著者。 郷愁の一枚です。

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