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ミステリの祭典

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万年島殺人事件
壊し屋翔子の事件帖

作家 舞阪洸
出版日2008年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2020/05/21 17:02登録)
(ネタバレなし)
 謎の組織・警視庁十三課の要請を受け、事件関係者の「妄想」を破壊する美女・沖田島翔子(おきたじましょうこ)。彼女は助手の萱島十河(かやしまとうが)とともに、とあるパソコンに残されていた「万年島」で起きた事件についての記録を読み始める。それは「ぼく」こと、樟葉学園ミステリー研究会の新入部員・外埜崎雪比古(とのざきゆきひこ)がしたためた、万年島で起きた惨劇、そしてひとつの島が丸ごと消え失せるという怪事件についての手記であった。

 ミステリーサークル「SRの会」の正会誌「SRマンスリー」誌上での特集<新本格発祥以後30年の間に書かれた、あまり話題になっていない気になる佳作・秀作>(といった趣旨の企画)のなかで紹介されていた一冊。
 同特集を一年以上前に読んで気になって本作の古書を通販で購入し、しばらく積ん読にしていたが、ついに昨夜、思い立って読んだ。あと誤解のないように言っておきますが、完全な小説(ラノベ仕様のパズラー)です。
 
 Amazonでも「いかにも」なレビューがされているけれど、大ネタのとっかかりの方はあまりにもあからさまに伏線が張られているので、これは誰でもわかるだろう。ただしそのあと、それがどう料理されたかはこの作品のポイントとなる。

 連続殺人劇の方はいろんなことを疑った方がいい仕掛けで、もしかするとアンフェアじゃないかとも一度は思ったものの、ほかの技巧派パズラーの作家のなかにはこんなことをしそうな人はいくらでもいそうで、そういう意味ではまあグレイゾーンのなかでセーフであろう。本シリーズの主旨もその担保となるし。
(ただし、一部の死体損壊については具体的な目的がよく見えないよね? これは単に(以下略)?)

 かたや唖然としたのは島の消失の真実で、これこそ(中略)だが、せっかくのこういうシリーズ、設定、世界観なんだから、これくらいやらなきゃソンだという作者の居直りも感じ取れて、その豪快さが快い。怒る人は、こういう作品に向いてないよね(笑)。

 ちなみに大きな物体の消失という主題から、作中(手記中)の登場人物たちはミステリファンらしくクイーンの『神の灯』に言及。ネタバレされてるので注意してください。さらにもうひとつ具体的な題名は書かずに、森博嗣にもこういう謎の設定に近しい作品があると言及。そのトリックにもほぼ触れている。
 森作品は前に読んだ&読みかけたいくつかの作品があまり肌に合わない感じで、ほとんど読んでないのだが、ファンの人ならピンと来るのであろう。
 今回、こっちはずばりそっちの方はネタバレをくらったわけだが、一方で「へえ、そういう作品があるの?」とちょっと読みたくなった(笑)。こういう機会でもなければ、ふたたび森作品に目を向ける機会はなかったかもしれない。
 以上、途中から余談でした。

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