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ミステリの祭典

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探偵物語
工藤俊作

作家 小鷹信光
出版日1979年09月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2026/05/03 13:45登録)
日本ハードボイルドの守護神、小鷹信光氏の数少ない創作小説。
テレビドラマ「探偵物語」の原案として、小鷹氏が招聘されて主人公の工藤俊作の造形の顧問になったわけである。テレビシリーズの設定をもとにオリジナルな作品として書いたのが本作。だから、テレビシリーズのキャラである相木政子やナンシー&かおりら、服部刑事なども顔見せ。また、俊作のアメリカ時代の因縁の相手も登場。というわけでテレビシリーズと直接に連結する小説になっている。

工藤は行方不明の娘玲子を連れ帰るように、実業家の戸部からの依頼を受ける。しかし、秘書との触れ込みの永谷という男に操られている印象が引っかかる。工藤は調査を開始するが、戸部は「玲子は誘拐されて、身代金が要求があった」ことを告げる。工藤はこの誘拐が玲子の狂言誘拐ではないかという疑惑を持つが、戸部の政界工作と黒い霧事件との関わりを、工藤との因縁を抱える黒崎から教えられ、この誘拐事件の背後にある込み入った事情を洞察していく...身代金の受け渡しを好機として工藤と黒崎、永谷一派がそれぞれこの誘拐事件を利害に結びつけようと動き出していく。そんな只中で、誘拐の首謀者と見られる男の家で死体が転がる...

こんな話。もちろんハードボイルド私立探偵小説としては王道な話。しかし「長編ネオ・ハードボイルド」と銘打たれているあたりが評者は気になる。小鷹氏はどこら辺に「ネオ・ハードボイルド」を感じていたのか、という問題意識だね。1979年だからすでに、名無しのオプ・フォーチュン・ワイン・ブランドステッターといった初期勢は紹介済みであり、ハメット・チャンドラー・ロスマクではない「ネオ」って何だ?ということが常に念頭にあったのだろうね。

もちろん、ハメット式の狭義の「ハードボイルド文」ではないわけで、それ以上に探偵像の造形として「孤独なオレ」の小説ではなくて、探偵のプライベートと周囲の人々を含めた小説であることなんだろう。特に本作の場合、テレビシリーズとしてのレギュラー出演者というお約束があるからこそ、「孤独なオレ」ではなくて、工藤俊作とその周りの人々という環境の問題としての「ネオ・ハードボイルド」だったんだろうね、とは得心がいくというものだ。

まあだからこそ、確かに多数の人死もあって、悲劇といえば悲劇だけども、ロスマク的な陰鬱さというわけではない。やはり読みどころは、工藤・黒崎・永谷一派が監視する中、身代金を受け取ってそれを追跡するプロセスのようにも感じる。受け渡し場所がわかっており、また、誘拐犯側も監視・追跡上等で仕掛けてきた身代金受け渡しである。この追跡の駆け引きの面白さが優ったように感じる。
(個人的には篤実な目立たないことを買われて工藤に雇われる探偵の小西がいいなあ。けどこの小西くん、小説ラストでの動き方は危ういよ。大丈夫か)

No.2 6点 kanamori
(2026/04/27 12:16登録)
「私立探偵の工藤俊作さんだね?」………下北沢の雑居ビルにある事務所で受けた電話の内容は、失踪した17歳の少女の捜索依頼だった。相手の低い威圧の入った声と、四日間の期限つきという奇妙な条件はあるものの、高額な報酬にひかれ工藤は依頼を引き受ける。だが、調査を始めて間もなく、少女を誘拐したという何者かの脅迫電話を端緒に、事件は複数の人物が関わる複雑な様相に変わる。(本書裏表紙の内容紹介文を一部抜粋)

昭和54年から55年(1979~80年)にかけて日本テレビ系列で放映された、松田優作主演の伝説的な連続ドラマ「探偵物語」の原案者は、確かに小鷹信光ですが、このたび復刊された創元推理文庫版の巻末の小山正の解説(ドラマ制作の裏話)によると、小鷹は主に探偵のキャラクター設定を提示したものの、ドラマのプロット作りには関わってはいなかったようです。企画打合せ時に、突如として小鷹が小説版を書くと宣言し、TV放映と小説の出版が同時に実現したという経緯があった。このエピソードには驚いた。だから本作はTVドラマのノベライズではなく、小鷹のオリジナル小説になります。匿名でポルノ小説を書いた経験はあったようですが、初めて書いたハードボイルド小説とは思えない完成度の高さを感じます。
ドラマの方は、良くも悪くも松田優作の個性というか存在感が大きく、ハードボイルド探偵のパロディとまでいかないにしても、戯画化した造形が目立った作品。
小説版は、女性弁護士などTV版のサブキャラなどの設定をそのまま活かしながら、翻訳モノで培ったと思われる洒落た比喩表現の多用と、ロスマク風の複雑な家庭環境、「マルタの鷹」を思わせる裏の筋立てなどが、なかなかやるなと思わせます。書かれた時代性も多少関係する違和感が多々あり、昭和の国産ハードボイルドあるあるな浪花節的な展開は、個人的には気になった。

No.1 4点 江守森江
(2010/07/20 07:19登録)
作者は、一般男性にはフランス書院文庫(独身時代にはお世話になった)での官能小説翻訳家としての顔が一番お馴染みだろう。
しかし、ミステリー分野では、刑事コロンボや数多のハードボイルド作品の翻訳を手掛ける第一人者として知られている。
そんな作者がテレビドラマを企画して、松田優作主演でヒットを飛ばした。
それが本作だが、ドラマと平行出版されたオリジナル原作なので(ドラマは飛び飛びにしか観ていない)内容は違うらしい。
日本が舞台だが、海外テイストなので好みから外れている。
更には、松田優作が思い浮かぶが、松田優作は「太陽にほえろ!」のジーパン刑事が一番だと思っているので微妙な読書になり残念でもあった。
※余談
数年前、この作品のパチンコ台で大勝ち(4万発・20箱)した事が思い出された。

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