マンハッタンの悪夢 |
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作家 | トマス・ウォルシュ |
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出版日 | 1959年01月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | |
(2020/06/18 04:19登録) (ネタバレなし) その年の二月。石油会社の社長ヘンリー・L・マーチスンに仕える老運転手チャールズは、雇い主の6歳の御曹司アントニー(トニー)を下校時に迎えに行く。だがチャールズは謎の賊に襲われ、トニーはいずこかに誘拐された。その直後、マーチスンの社長秘書フランシス・ケネディーはマンハッタン駅に向かう列車に乗り合わせていたが、トニー誘拐現場の最寄り駅から乗り込んだ怪しい赤毛の大男をたまたま目撃。やがて児童誘拐の事実が確定するなか、フランシスが抱いた不審は事件に関係するものと見なされる。誘拐犯一味の活動の拠点の一角がマンハッタン駅の周辺と認められ、NY警視庁の面々、そして「タフなウィリー」ことウィリアム・パトリック・カルフーン警部補率いるマンハッタン駅鉄道警察官たちは、少年の無事な身柄の奪回と誘拐犯の検挙に躍起になるが。 1950年のアメリカ作品。 評者がこの数年ちびちび読んでいるトマス・ウォルシュ(これで3冊目)の処女作。刊行年度のMWA長編新人賞ということは以前から聞いていたのでちょっぴり期待したが、先に読んだ同じ作者の『暗い窓』と同様に、良いところと悪いところが相半ば、という手応え。 先にどっかで聞いていた設定から、1940~50年代のワーナー系の都会派モノクロ犯罪&警察捜査映画のような雰囲気を予期していた。それで実際の内容の大枠はその通りなのだが、小説の各章ごとの紙幅がひとつひとつ長過ぎる感じで、イマイチテンションが上がらない。こういうのは各章が短かすぎても長めすぎてもダメだなと、改めて実感した。 それと前述の『暗い窓』の時にも感じたのだが、主要人物へのフォーカスが中途半端。 作中のリアリティとしてこういう事件のこんな状況に際して複数の捜査組織のかなりの数の面々が動員されるのは当然で、それ自体はいい。 だが、その一方でフィクションドラマとしては、心やさしいが不器用な男カルフーンを明確な主人公ポジションに据えて、被害者側の関係者フランシスとの、二進一退をくりかえす恋愛模様をサブストーリーに設けている。 その趣向自体もやはりよいのだが、カルフーンがしっかり主人公枠をこなす一方で、彼と連携するニューヨーク警視庁側の面々が確かに捜査には加わりながら(出番はそれなりに多いものの)、まるでドラマの上で生きていない。 後半にモブ的に登場してワンシーンを見せ場とする末端のパトロール警官の方がまだ印象的な活躍をしている。 これならもっと割り切った作劇にして、カルフーンが一匹狼的に活躍する状況のなんらかの理屈づけをした方が良かったのでは? という感じだ。 (あと、ベタな手法ではあるが、こういう作品の場合、ホイット・マスタスンの『非常線』みたいに、各章のはじめに経過する日時や時間の表示があったほうが効果を上げたとも思う。) 一方で舞台となるこの時代のメガロポリス駅・マンハッタン駅周辺の描写は、物語の進行の上でなかなか効果的なタイミングで描き出される。この、ひとつの街ともいえる世界の秩序を自分の縄張りとして守ろうとするカルフーンの益荒男ぶりが、ヒロインであるフランシスの心に響く演出にもマッチしてなかなか快い。本作がMWA新人賞をもらえたのは、この辺りのイイ感じさゆえではなかろうか、と思うほどだ。 それで最後の3分の1ほど、誘拐犯一味の思惑が少しずつズレ込み、一方でカルフーンたち捜査陣側の焦燥が高まってくるあたりになると、さすがに物語もかなり波にノッてくる。 実際のマンハッタン駅の構造を知悉していたらさらにずっと面白いんだろうな、と思わされる隔靴掻痒な部分も少なくないが、その辺はないものねだりか。最後の物語のまとめ方も、まあこれで良いだろう。 トニーの母親がいるらしいのに物語のなかでほとんど間接的な叙述もない? のがヘンだとか気になるところもあるが、前述の『暗い窓』と比べて主人公がきちんと主人公っぽいこと、さらにさすがに処女作ゆえの意気込みか、舞台となるマンハッタン駅の描写のボリューム感が印象的。評点はこんなところで。ただし小説総体としては、実はその『暗い窓』の方が良かった面もなくもない(味のある脇役の扱いとか)。 いずれにしろ、邦訳されたウォルシュ作品で、評者の未読は残り3冊。またタイミングを見て、少しずつ読んでいきましょう。 |
No.1 | 5点 | こう | |
(2012/01/28 00:29登録) 以前ガイド本の折原一の推薦があって読みました。石油会社の社長の幼い子供の誘拐事件を扱った警察小説でした。 50年以上前の作品で古いのはどうしようもないですし犯人があまり優秀そうに描写されていないのが残念です。身代金を奪うためのプロットも杜撰でした。 ただローテク時代の誘拐や警察捜査はこんなものなのかなあという興味はありました。 |