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ミステリの祭典

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鯉沼家の悲劇(アンソロジー)
鮎川哲也編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1998年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2010/04/17 23:38登録)
目玉は表題作の「鯉沼家の悲劇」、横溝正史の未完短編を岡田鯱彦、岡村雄輔がそれぞれ補完させた「病院横丁の首縊りの家」、そして狩久氏の短編「見えない足跡」「共犯者」の2編。

「鯉沼家の悲劇」は序盤、田舎の旧家の因縁めいた話が訥々と語られる辺り、横溝正史作品を髣髴させ、むごたらしい悲劇の幕開けを今か今かと忸怩たる思いで焦らされたが、最初の殺人があってからあれよあれよとこちらが推理する暇を与えずに鯉沼家の人々が次々と死んでいき、解決も呆気なく、ぽかんとしてる間に終わってしまい、いささか消化不良。使用人が犯人というのは当時のヴァン・ダインの十訓に反する行為であったろうから、どういう風に巷間に受け入れられたかが気になる所。

「病院横丁~」は2者の解釈は違うのは当たり前だが、真犯人がどちらも劇団座長の弟子だったのは興味深い。文体や語り口は岡田氏の方が好みだが、トリック、特に妹が盲目だったという設定を設けた岡村氏の仕掛が秀逸だった。

狩氏の短編は今となってはもはやヴァリエーションの1つに過ぎないもの。両編のメイントリックはどちらも平凡なものだったが「見えない足跡」は最後に探偵役の推理が二重構造になっていたのが救い。「共犯者」は真相を知った後のまゆりの行動に力点が置かれていたが、古さは否めなかった。

やっぱり「幻の名作」というものはそうあるものではないのだろう。

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