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ミステリの祭典

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そして粛清の扉を

作家 黒武洋
出版日2001年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2021/01/05 22:31登録)
荒れ果てた都内の某私立高校。卒業式の前日、あるクラスで女性教師が教室に立てこもり、次々と生徒を処刑しはじめた。サバイバルナイフで喉をかき切り、手馴れた手つきで拳銃を扱う彼女は教室を包囲していた警察に身代金を要求。金銭目的にしてはあまりに残虐すぎる犯行をいぶかる警察に対し、彼女はTV中継の中、用意された身代金で前代未聞のある「ゲーム」を宣言した。彼女の本当の目的は? 第1回ホラーサスペンス大賞を受賞した、戦慄の衝撃作。
Amazon内容紹介より。

胃もたれがするような重々しい作品。そしてその雰囲気を吹き飛ばすような筆の勢いと巧妙なプロットで描かれたサスペンスの異色作でしょう。一見『バトルロワイアル』に近い作風かとも思えますが全然違います。
平凡な中年の女性教師が私立高校でとんでもない事件を引き起こします。クラスの全生徒を人質に取り、逆らう者は容赦なく殺していきます。その手際の良さは、それまでの目立たなかった教師像からは想像できないもので、まるで殺戮マシーンのようですらあり、しかも何もかもが計算されつくした計画を次々に実行に移していきます。巨額の身代金を警察に要求し一体何を始めようとするのか・・・。

そして相対する警察側の指揮者である弦間との対決は、手に汗握るサスペンスフルな物語を紡いでいき、最後に生き残る者は誰なのか、マスコミがその後の報道することになるはずの真実とは一体何か、など最後の最後まで興味が尽きることなく読ませます。絵空事と分かっていながらかなりのリアリティを有しており、立て籠もり犯人、人質の生徒たち、警察、マスコミそれぞれの立場から多角的に又映像を見る様に描かれ、真に迫った演技を目の前で見せられているかの如き錯覚すら覚えます。
文章がこなれていなくて若干読みづらいとか、SATの動きが鈍すぎるとか、ご都合主義などの瑕疵を迫力で押し切った作者の手腕は、見るべきものがあると思いました。

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