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ミステリの祭典

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孤島の殺人鬼
鮎川哲也編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1995年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 Tetchy
(2010/04/05 21:24登録)
今回は通常の『本格推理』シリーズとはちょっと違い、今まで採用された方々の2作目を纏めたもの。しかし、これがやはり苦しいものだった。
一番鼻につくのが商業作家でもない人間が勝手に自分で創造した名探偵を恥ずかしげも無く堂々と登場させていること。しかもそういうのに限って内容は乏しい。魅力のない主人公をさも個性的に描いて一人悦に入っているのが行間からもろ滲み出ている。

しかし、今回こういった趣向を凝らすことで実力者と単なる本格好き素人との格差が歴然と目の当たりにできたのは非常にいいことだ。現在作家として活躍している柄刀一、北森鴻、村瀬継弥とその他の応募者の出来が全く違う。他の方々の作品が単なる推理ゲームの域を脱していないのに対し、この3名の作品は小説になっており、語り口に淀みがない。

今回これら素人の作品を読んで、この何ともいえない不快感というか、物足りなさをもっと適切な言葉で云い表せないかと考えていた。その結果、到達したのが「小説になっていない」である。物語である限り、そこには何かしら人の心に残る物が必要なのだ。それが確かに世界が壊れるような快感をもたらす一大トリックでも構わないし、ロジックでも構わない。しかしそのトリック、ロジックを一層引き立てるのはやはりそこに至るまでの名探偵役の試行錯誤であり、苦労なのだ。

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