home

ミステリの祭典

login
春を待つ谷間で
リディア・チン&ビル・スミス

作家 S・J・ローザン
出版日2005年09月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点
(2021/09/18 07:30登録)
次作『天を映す早瀬』はリディアにとってはいわば実家である香港が舞台でしたが、本作はビルが山小屋で休暇を過ごしているニューヨーク州北部での事件です。つまりこの2作は、その意味で対をなす作品だと言えます。ただし、次作ではビルが最初からリディアについて香港に行くのに対し、本作ではリディアがビルと電話でやりとりして調査結果を知らせるだけでなく、現場にやってくるのは、最後近くになってからです。
今回ビルは内田光子の弾くモーツァルトのピアノ・ソナタを聴きながらの登場。他にも音楽は色々出てきますし、依頼人が有名な画家(登場人物表には本名と分けて両方載っています)なので、芸術的要素は多いです。一方、miniさんも書かれているとおり、シリーズ中でも特にハードボイルドっぽい作品でもあります。基本的な事件の構造は単純ですが、事件決着後判明する事件の一部については、意外性がありました。

No.1 6点 mini
(2011/02/21 10:01登録)
春を待つ晩冬のニューヨーク州北部にあるアディロンダック山地、一帯には湖も多くプラシッド湖という湖やスキー場もある
ピンときた人も居ると思うが、そう冬季五輪レークプラシッド大会が行なわれたのはこの地域なのである
冬季五輪がニューヨーク州で行なわれたとはね
都会の喧騒を逃れた人々が週末などに足を延ばす場所だが、山あいの谷間にビルは山小屋を買っていた
たまに一人静かにピアノを弾く為だ
しかし今回は初めて仕事が理由でこの地を訪れた
始めは単なる盗難事件かと思われたがまたしても殺人事件が

原題は”石の採石場”てな意味で石が二重で少々くどいが、相変わらず作者の題名の付け方は格好良い
シリーズ6作目と言う事は偶数番目だからビルが主役の順番だ
しかしこの作ではいつものマンハッタンから離れた舞台設定のせいもあってシリーズの中で最もリディアの出番が少ない
一応終盤ではそれなりに見せ場はあるが、前半は脇役どころかチョイ役でしかない
そして読んだシリーズ中でも最も伝統的ハードボイルドの雰囲気が濃厚で、元々ビルが主役の回ではその傾向はあったが、今回は特にそうだ
それだけにシリーズ恒例のリディアとの掛け合い漫才的な要素が少なく、それを楽しみにしているファンには物足りない
事件の真相も、いつもの複雑さが無くてちょっとあっさり目なので、舞台の異色性とも相まって代表作とは言えない
その代わり舞台設定からくる雰囲気は大いに楽しめた

2レコード表示中です 書評