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ミステリの祭典

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嵐の夜

作家 ディーン・クーンツ
出版日2001年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2010/02/02 23:49登録)
5編の長短編が含まれた作品集。
「ハードシェル」はクーンツお得意の異形物サスペンス。今回はこの主人公も実は宇宙人だった(しかも敵よりもかなり優れた!!)という内容。読んでいる途中で解ったから驚きはなかったが、敵を倒す方法がアイデアとして優れている。

次に「子猫たち」は奇妙な味の短編とでも云おうか。正直、最後のオチはよう解りません。

「嵐の夜」はこれまたSF。しかしこれは設定が非常に優れている。ロボットが地球の最高知能生存者として生活する未来。二世紀を寿命として作られているため、非常に頑丈でスリルを味わうのを何よりも欲している。そんなロボット達が従来得ている能力を最小限のものとし、山中へ狩に出た際に遭遇する最強の獣“人間”。しかしクーンツは最後までこの“人間”を今ある人間として描かない。だからこれは実は猿かもしれないし、実は宇宙人かもしれない。そんな得体の知れない物として描いたまま終わる。自分としてはこれがベスト。

作者お気に入りの「黎明」は実は各評論でも評価が高いもの。無神論に固執する父親が最愛の妻と息子を亡くす話。そういう過程を経て最後に神はいるという結論に達するのだが、そのあまりにも無神論を妄執するこの父親像がクーンツ作品らしくかなりしつこく、ねっとりした粘着感を備えている。思っていたよりも後味がすっきりしなかったせいか、私としてはさほどいいとは思えなかった。

最後は長編『夜の終わりに』の改稿版「チェイス」。数ある初期作品の中でこの作品を改稿する物として選んだ動機は最後のあとがきに詳しいが、それを読んでも何故この作品を?という疑問は拭えなかった。

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